日本AMDは2025年12月3日に「AMD Advancing AI 2025 Japan」を開催した。同社エグゼクティブらが登壇したラウンドテーブルでは、AI PC市場の成長予測、ハイブリッドAI(HAI)への移行、そしてリアルタイム処理が鍵となるフィジカルAIの最前線について詳細が語られた。
日本AMD 代表取締役社長のジョン・ロボトム氏は、AIが急激に浸透する中、「AMDのテクノロジーは多様な領域で既に搭載され、活用されている」と現状を語った。その上で、企業がAI活用を推進するフェーズでは「各デバイスだけではなくエコシステム全体で取り組む」ことの重要性に言及。AMDがAIの活用環境全体に貢献していく姿勢を示した。
「ローカルでもAIを使う」が当たり前に CPUのAI性能10倍へ
日本AMD 副社長の関路子氏はAI PCにフォーカス。「間違いなく伸びる」と期待の色を見せた。
大規模なAIモデルが、今やモバイル端末でもローカル環境で動作するほどの進化を遂げている。関氏は「これから1年、2年、3年で爆発的にAIの性能は上がる」との見解を示し、企業がAI活用を加速させる上で、データをローカルで扱うことの重要性が増すと指摘した。
AMDは、2022年から2027年にかけてCPUのAI性能を10倍以上に引き上げることを計画している。これにより、AI PCの進化からHAI(ハイブリッドAI)戦略の実現を加速させる。関氏は、ローカルでAIを動かすことの価値として、プライバシーやセキュリティの確保を強調。「AIの実行環境はクラウドからローカル、またはそのハイブリッドな形へと変わりつつある」と説明した。

フィジカルAIを推進するAMDの独自技術
AIの活用領域は、現実世界と物理的に結びつくフィジカルAIへ拡大している。日本AMD APAC エンベデッド・セールス ジャパン カントリーディレクターの杉山功氏は、「今後10年間で自動運転車、ロボティクス、ドローンなど数十億台規模のスマートデバイスが世の中に実装される」と述べた。
フィジカルAIがクラウドAIと決定的に異なるのは、その処理要件である。杉山氏は、クラウドが主に「学習」や「推論」に特化していたのに対して、フィジカルAIでは、ミリ秒単位のリアルタイムで「認識」「判断」「実行」のプロセスを処理しなければならないという。

フィジカルAIにおけるこの複雑なリアルタイム処理をAMDが実現できる背景には、同社が持つ統合された技術と独自のソリューションの強みがある。これにより「認識」「判断」「実行」のプロセスをすべて最適化できるとのことだ。杉山氏は日本市場での具体的なAI活用事例を紹介し、フィジカルAIとの親和性の高さを強調した。
- JR九州:AIを活用した線路の点検作業で、高度な画像処理とAI技術により、ボルトの緩みや線路の異常を自動で検知・点検できるシステムが構築された。これは、現場の作業効率と安全性を高めるユースケースである
- SUBARU:自動車のADAS(先進運転支援システム)である「EyeSight(アイサイト)」に、AMDのアダプティブ コンピューティング技術が活用されている。SUBARUが掲げる「2030年に死亡事故ゼロ」という目標の達成に向け、最先端のセーフティ機能を実現している
AMDは、今後もポートフォリオ全体でAIの進化を推進し、企業が直面する多様なAIワークロードに対応していく構えである。
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AIdiver編集部(エーアイダイバーヘンシュウブ)
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