開発AIエージェントの出現がもたらした「役割の逆転」
AIを「ファッション×テクノロジーを深化させるコア技術」と位置づけるZOZO。開発現場から顧客体験に至るまで、全工程にAIを組み込む方針だ。足元では、生成AIを活用した業務効率化ツールの開発や、AIリテラシー向上のための研修に力を入れている。既に生成AIの活用は全社的に浸透しており、週に1回以上活用している社員の割合は95%に。役職・職種を問わず、身近な存在となった。
同社は元々、事業や研究におけるAI活用には積極的に取り組んできた。世の中に生成AIが一気に普及した時期からは、その業務活用も進んでいる。そして、2025年度には開発AIエージェントにまで活用の幅を広げた。背景には「かなり大きなブレイクスルーがあった」とCTOの瀬尾氏は語る。
「以前は、あくまでも人が運転手であり、生成AIは補助のような立ち位置でした。しかし、今年に入って立場が大きく変化したんです。運転を生成AIが行い、人間はそのナビゲートをすれば良い。それほど状況が一変しました」
技術の進歩によって、ZOZOの事業もさらなる進化を遂げようとしている。たとえば、生成AIを活用すれば、ZOZOTOWN上の商品やコーディネートに高精度な属性情報などのメタデータを自動で付与することが可能だ。それに基づいて、ECサイト上で商品をより詳しく説明したり、顧客に適切にレコメンドしたりできるようになる。顧客体験の飛躍的な向上によって、売上増も期待できるだろう。
「今までもデータは大量にあり、活用はしてきました。その活用をより短期間で行えるようになった点が大きなメリットだと思います。ファッション業界はメタデータが重要です。メタデータを有効活用することで、顧客体験の改善につながるからです」
こうした体験を実現する大きな役割を担うのが、同社の開発を支えるエンジニアたちだ。同社は、2025年7月に開発AIエージェントを全エンジニアに導入すると発表した。現場メンバーが実際に試用し、その実力を体感したことが大きなきっかけだったという。そもそもエンジニア社員が開発AIエージェントに興味を抱いていたため、浸透自体にハードルはなかった。
一方で、活用となると社内ルールなどを整える必要は当然出てくる。開発AIエージェントの導入初期はCTO直下の兼任メンバー3人のみで活用を推進していたが、毎週のように登場する新しいAIツールに対応することは難しかった。そこで、瀬尾氏はCTO直下に社内のワーキンググループを構築し、現場の第一線で生成AIを活用しているエンジニアスタッフを巻き込んだ。
「1番大事なのは『現場感』です。どの開発AIエージェントを、何を基準に導入するか。どう使ってもらうか。現場のメンバーの意見が必要となります。現場の『使いたい』という熱量が高かったからこそ実現しました」
