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橋本大也氏が伝授!結局、AIにどう指示すればよいのか?〜5.0時代のプロンプトエンジニアリング

【動画紹介】国際大学GLOCOM「六本木会議オンライン」

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 AI活用が急速に進む現代において、多くの人が「AIに何をどう頼めばいいかわからない」という悩みを抱えている。本講演では、10万部のベストセラーになった『頭がいい人のChatGPT&Copilotの使い方』の著者で、デジタルハリウッド大学でAIを教える橋本大也教授が、5.0時代のプロンプト・エンジニアリングについて基礎から応用まで体系的に解説。効果的な指示の出し方、AIの特性を理解した上でのコミュニケーション手法、そして実際のビジネス現場で使える具体的なテクニックを豊富な事例とともに紹介。最新のAIとの対話を通じて生産性を劇的に向上させる方法を追求する。(記事協力:国際大学GLOCOM)

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  • 動画URL:https://youtu.be/urA66f5jbxA?si=tmbXYSg8sqtwREZk
  • 配信元:国際大学GLOCOM
  • スピーカー:橋本大也氏(デジタルハリウッド大学教授)+(モデレーター)前川徹氏(東京通信大学 情報マネジメント学部 教授/国際大学GLOCOM主幹研究員)

GPT-5「Deep Research」による高度な調査資料を作る

 橋本氏は前半、生成AIの実力を端的に示す高度な資料作成方法を披露。GPT-5の「Deep Research」機能により、ユニコーン企業上位100社の資料を短時間で作り上げるデモンストレーションだ。

 その方法はシンプル。CB Insights(米国の調査会社のWeb)の公開記事から上位1,200社の時価総額ランキングのExcel表を取得し、上位100社分をテキストで貼り付ける。そこに「これは2025年のユニコーン企業の時価総額トップ100社。Webを調べて各社に400文字のキャッチーなタイトルと説明をつけて、ランキングと時価総額も表示する」と指示。

 この指示だけで、100社の日本語リストが生成。事業内容とサービス、コア技術と競合優位性、産業別分析まで自動生成された精度の高い資料が約1時間で完成した。もちろんチェックは必要。この分野の専門家でもある橋本氏が検証したところ、ほぼすべてが正確だったという。

「素晴らしいデザインに」という無茶ぶりでニュースサイトが完成

 生成AIの進化は、プログラミングの世界でも顕著。この領域ではClaude Codeのコーディング能力の向上が目覚ましい。橋本氏が示したのは、Claude CodeによるChatGPT-5専門ニュースサイトの構築。要件定義は驚くほど曖昧だ。プログラミングのプロンプトとしては、要約すると「PHPとSQLiteでChatGPT-5の話題に特化したニュースサイトを作る。30以上の日本とアメリカのニュースサイトのRSSを読み込んでChatGPT-5関連記事のみを表示する。便利な機能が5つ、視覚効果を5つ、素晴らしいデザインにする」。

 さらに「素晴らしいデザインにしろ」「便利な機能が5つ、視覚効果が5つ」といった大雑把な指示で要件定義そのものを投げたところ、Claude Codeは的確に反応。「ニュースアグリゲーターを作成します。サイトとクローラーの2つのPHPファイルを作成します」と応答し、プログラム生成を開始した。

 完成したコードには、日本のIT関連の数十のサイトを監視する仕組みが実装済み。毎時間ニュースを取得し、「ChatGPT-5」という単語が含まれていれば、その記事を収集してデータベースに格納する設計になっている。レンタルサーバーにアップロードすると、実際に動作するニュースサイトが完成。曖昧な要件から約1時間で、実用的なWebメディアサービスが誕生した。

3Dゲームすら生成可能に

 さらに驚くべきは、3Dゲームのような複雑なプログラムも生成できること。橋本氏は、主要AIキャラクターが働くサイバーパンク風のオフィス空間を作成させた。プロンプトは確かに長大だが、結果は見事。

 実際にブラウザ上で動作する3D空間。WASDキーで移動し、各AIキャラクター(ChatGPT、Claude、Gemini、GitHub Copilot、DeepSeek)に近づいてEキーを押すと対話できる。Claude君なら「安全性と誠実さについて」、ChatGPTなら「汎用的な知識について」、それぞれ特徴的な回答をする仕組み。このようなインタラクティブなゲームのようなものも、短時間で作成可能な時代になっている。

金八先生が教えるプロンプトエンジニアリングの授業

 橋本氏は、プロンプトエンジニアリングの基本を「金八先生の授業風」にClaudeで作成させ、分かりやすく解説。レトロなテレビ風フレームで黒板風の背景、校歌がアニメーションで流れるウェブページという演出も印象的だ。5つの授業では、AIに明確に伝える基礎、「あなたは数学教師です」といった役割設定、文字数や論調などの制約条件、良い例と悪い例を示す例示と誘導、そして段階的に考えさせる思考の連鎖といった、プロンプト設計の核心を体系的に解説。そして金八先生らしい締めくくりが印象的だ。「AIは便利な道具だが、それに頼りきってはいけない。自分の頭で考え、自分の心で感じることを忘れるな」

ベクトル空間で理解するAIの正体

 プロンプトエンジニアリングを真に理解するには、大規模言語モデルの仕組みを知る必要がある。橋本氏はこの点を、ベクトル空間という概念で説明した。

 GPTのTはTransformerの略。基本的には文章を数値ベクトルデータに変換し、そのベクトルデータを再び文章に変換して出力する。「今日はいい天気ですね」という言葉は、数万個の数字の羅列(ベクトルデータ)に変換される仕組みだ。

 実際のLLMは膨大なトークンと数千ベクトル次元で構成されるが、シンプルに2次元のグラフで説明。重要なのは、関連する知識は近い場所にマッピングされること。「日本の首都は」「日本の首都って」「日本には首都があり」のどの書き方をしても、大体同じ場所にマッピングされる。橋本氏は「日本の首都は東京です」という情報がインターネット上に大量にあるため、続きは統計的に「東京です」になると説明。「基本的には質問とAnswerは、モデルの空間上で近い場所にあると考えると良い。要は近い言葉を喋っているだけ」というわけだ。

 「必要なベクトルの要素と大きさを簡潔に伝える文章を書くことがプロンプトのポイント」──橋本氏が語るこの理解が、効果的なプロンプト設計の基盤となる。

 さらに、AIの知識を宣言型知識(辞書的な定義)と手続き型知識(プロセスやノウハウ)の2つに分類。「ChatGPTに何かの作り方を聞いてみると、その豊富な手続き型知識に驚かされます」と指摘。かまぼこから半導体、国家形成まで、何の作り方でも知っているこの膨大な手続き型知識により、大きなプロジェクトをタスクに分解し、個々のプロセスを実行させることができるのだ。

次のページ
実践的プロンプト作成の7つの指針

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この記事の著者

京部康男(AIdiver編集部)(キョウベヤスオ)

ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineとAIdiverには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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