AIが物流の現場を変える 社会課題をどう解決するか
物流業界の環境は厳しさを増している。「物流の2024年問題」に象徴されるドライバーの時間外労働規制、EC拡大による物量増加、そして労働力減少。こうした課題から、「止まらない運用」は今の物流業界の大きなテーマといえるだろう。
そんな中、物流現場では自動化・省人化が進んでいる。これにより利便性が上がった一方で、設備依存度が高まれば、突発的な停止がサプライチェーン全体に波及するリスクもある。この課題に対して、イトーキは自動物流倉庫の稼働データを収集・AI解析して故障の兆候を事前に把握する予知保全システム「スマートメンテナンス」を開発した。
日常の管理タスクを機械学習によって自動化するデータベース「Oracle Autonomous AI Database」、機械学習モデルの作成・トレーニング・管理が可能なプラットフォーム「Oracle Cloud Infrastructure(OCI) Data Science」を基盤とする同システム。現場に行かずに遠隔で状況把握・復旧を支援できる「リモートメンテナンス」と一体の保守サービス「ITOKIアドバンスドメンテナンス」として、イトーキのシャトル式自動倉庫「システムストリーマーSAS-R」向けに2026年1月から提供が開始される。
11月5日に行われた記者向けの説明会では、イトーキと日本オラクルがAIを活用した物流現場のアップデートについて語った。
説明会の冒頭でイトーキの代表取締役社長を務める湊宏司氏が示したのが「AIを経営の中核に据える」姿勢だ。今回の予知保全システムの開発は、その一環だという。
また、同氏はパートナーとして日本オラクルを選んだ理由を、「AIの食料であるデータのハンドリングのエキスパートであること」と「ミッションクリティカルなSASを提供する上での信頼性」と明かした。日本オラクルでクラウド事業を統括する竹爪慎治氏も「イトーキの取り組みが、業界・社会全体の課題を解決するという当社のAI戦略に合致した」と話す。
オフィス事業の印象が強いイトーキだが、商品の入出庫、保管、ピッキング(集荷)、荷合わせ(仕分け)などを自動化するSAS(システマストリーマー)をはじめ、設備機器・パブリック事業も展開してきた。現在、さまざまな業種で約750基のSASが稼働している。イトーキの設備機器事業を手掛ける中村元紀氏は「トラブル発生時の対応は定期的な点検がメインだが、ここに予知保全システムを加える。できるだけ効率的に保守を行う」とした。2026年までの中期経営計画の一つとして、同事業における保守ビジネスの確立を目指している。
