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AIdiver Press

オラクルCTO ラリー・エリソン氏「Oracle AI World 2025」で「AI後の世界」語る


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 2025年10月14日、ラスベガスで開催された「Oracle AI World 2025」において、オラクルの取締役会長兼最高技術責任者であるラリー・エリソン(Larry Ellison)氏が基調講演を行った。(事後追記:エリソン氏の講演はライブ中継で行われた)。「AIがすべてを変える」という大胆な主張から始まった講演は、AI技術の本質的な進化と、それが医療、農業、環境管理といった産業エコシステム全体に及ぼす影響を、具体的なプロジェクト事例とともに語るものだった。

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(本記事はOracleの公式チャンネルの「Larry Ellison Keynote on Oracle's Vision and Strategy: Oracle AI World 2025」を元に構成している)

 AI技術が急速に実用段階へと移行している中、エリソン氏は、AIモデルの構築そのもの以上に「それらを実際の課題解決に活用する段階こそが世界を真に変える」と強調した。

45万個以上のNVIDIA GB200を配備

 現代のAIモデルは「マルチモーダルモデル」と呼ばれ、人間の脳と同様に複数のニューラルネットワークで構成されている。視覚処理用、言語処理用、推論用といった専門化されたネットワークが協調して動作する仕組みだ。

 エリソン氏は、人間の脳が20ワットという低消費電力で860億のニューロンを動かすのに対し、大規模AIクラスターは12億ワットという膨大な電力を消費すると説明した。「これは米国の100万戸の家庭に電力を供給できる規模だ」。オラクルがテキサス州アビリーンに建設中のデータセンターは、完成時には45万個以上のNVIDIA GB200を搭載する計画だという。

テキサス州アビリーンに建設中のデータセンター(Oracle公式YouTubeより)

 しかし、ここに業界共通の大きな課題がある。ChatGPTやAnthropic、Geminiといった主要AIモデルは、すべてインターネット上の公開データでトレーニングされている。企業や医療機関が保有する高価値な民間データは、プライバシーとセキュリティの観点から学習に利用できない。「人々は自分の民間データを民間に保ちたい。しかし同時に、この強力なツールを使って民間データで推論したいとも考えている」とエリソン氏は指摘する。

 オラクルはこの課題に対して「RAG(Retrieval-Augmented Generation)」を進化させることで向き合う。オラクルが発表した「Oracle AI Data Platform」もこの技術を中核としている。

 仕組みとしては、データベース内のデータを「ベクトル化」し、AIモデルが理解できる形式に変換する。これにより、モデルは公開データだけでなく、企業の民間データでも推論を行えるようになる。オラクルのシステムでは、Oracle Databaseだけでなく、他のクラウドストレージ内のデータもベクトル化できる設計となっている。ただし、このアプローチには技術的な複雑さとセキュリティ上の課題がともなう。「簡単だったら、多くの人々がすでにそれをやっているだろう」とエリソン氏は認めている。

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この記事の著者

京部康男(AIdiver編集部)(キョウベヤスオ)

ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineとAIdiverには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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