創業者が語る「手書き×AI」が企業にもたらすもの

発表後、CEOのチャン氏、COOのトラン氏、AI製品担当のフォン氏にインタビューを行った。
──今回のアップデートで追加された機能が企業ユーザーにもたらす価値を教えてください。
チャン氏:Goodnotesをローンチして以来、情報やドキュメントを簡単に得られる初期的なAI機能や、長い文章を要約する機能を提供してきました。今回のアップデートでは、次のステップとして、よりクリエイティブなプロセスにAIが関与します。コンテンツを作成したり、レビューしたりといった形で、クリエイティブなプロセスそのものをAIが支援するのです。そして、ドキュメントだけでなく、マルチモーダルな形での処理が可能になりました。テキスト、手書き、スケッチ、オーディオといった様々な形式に対応しています。今後は動画も取り入れていきたいと考えています。
──AIの技術は、御社独自のものですか?それとも外部のLLMと連携しているのでしょうか?
フォン氏:いろいろな技術を組み合わせています。例えば、ハンドライティングの認識や、スケッチ・図解の認識に関しては、私たち独自の仕組みを持っています。そこにサードパーティーのLLMを組み合わせています。常に社内でも、どの組み合わせが最適かを繰り返し検証しています。
トラン氏:コアな部分については、インターナルな機械学習チームが担当しています。チームメンバーは世界中におりますので、日本にも機械学習に携わっているメンバーがいます。常にインハウスで開発すべきなのか、それともサードパーティーを活用すべきなのかを評価し続けています。この継続的な最適化が、高い認識精度を支えています。
──音声文字起こしの分野には数多くのAIツールがありますが、Goodnotesの優位性はどこにありますか?
トラン氏:一番のアドバンテージは、オンデバイスでの文字起こしができることです。企業内の重要な会議などでは、クラウドにデータを送りたくないという場合が多くあります。オンデバイス処理なら、データを外部に送信せずに文字起こしが完結します。さらに、オーディオだけでなく、タイプ、スケッチ、手書きを全てホワイトボードやノートブック上で統合できます。競合他社にはオーディオのみのものもありますが、私たちはシームレスに様々なモーダリティをミックスできるのです。
──AI機能で、企業ユーザーが特に注目すべきポイントはありますか?
フォン氏:一つ、AIを使ってとても合理的なのは、様々なドキュメント横断でAIを使うことができる点です。テキストであろうと、ホワイトボードであろうと、ノートブックであろうと。そこで導入したのがローカルエディティングという機能です。例えば、非常に長いドキュメントがあったとして、企業では全体を編集可能にはしたくない場合があります。一部分だけを編集可能にして、AIを使うという、その限定的な範囲でのエディティング機能を入れています。
──日本では法人利用でどのような活用が見込まれますか?
トラン氏:ホワイトボードは様々な業界で非常に役に立つのではないかと思いますが、特に建設業界では効果的だと思います。巨大な図面があって、それが今までページごとに切れていたのが、無限ホワイトボードを使って一ページで全部見ることができるようになりました。それから、どんなプロフェッショナル、どの業界であっても、Goodnotes AIを使って、思考のパートナー、クリエイションのパートナーにすることができます。ブレインストーミングを一緒にしたり、アイデアを共同で作ったりできます。
──日本での法人導入について、企業はどのような方法で購入・導入できるのでしょうか?
トラン氏:まず当社のウェブサイトから購入可能です。それから、直接私たちにコンタクトいただければ、日本に法人対応のチームがおりますので、お客様とお話をして、お見積もりをお出しすることも可能です。B2B企業は請求書での支払いを希望されることが多いので請求書支払いも可能ですし、クレジットカードでのお支払いもできます。今までライセンスでの配信をしていたんですけれども、今回のローンチで管理者コンソールが追加されていますので、そちらを購入していただければ、新しい社員への追加購入などが簡単にできるようになりました。契約形態はサブスクです。年間契約になります。
──今回、企業向けに強化した機能は他に何がありますか?
チャン氏:会議のオーディオエクスペリエンスを向上させることに非常に力を入れています。もう一つ共有しておきたいのは、B2Bのお客様であれば、動画での会議中にライブで文字起こしをして議事録を作成し、会議が終わったらノートを自動生成してお客様に送ることができる、この一連の機能がとても便利になっています。またGoogleドライブやDropboxなどのビジネスツールへの連携も今回のバージョンから可能になっています。
──最後に、企業の情報システム担当者やIT担当者に向けて、メッセージをお願いします。
チャン氏:私たちは最初、個人向けのノートアプリとしてスタートしました。けれども、企業やチームの方々に使っていただけるように大きく投資をしてきました。来年、いくつもの非常に興味深く、ワクワクするアップデートを予定しています。これらはすべてチームのコラボレーションを強化するためのアップデートです。
Goodnotesが提示しているのは、生成AIが普及する時代における人間の思考プロセスの捉え直しだ。AIは確かに効率的だが、それだけでは足りない何かがある。手を動かし、形にし、他者と共有する──この人間らしい創造のサイクルに、AIがどう寄り添えるのか。その一つの可能性として、検討に値するだろう。