11月4日、花王 化粧品研究所は、独自開発した肌評価AI「Kirei肌AI」をバージョンアップし、従来の約5倍となる計77項目の肌に関する網羅的な評価を可能にしたと発表した。なお、研究成果の一部は、第35回IFSCC(国際化粧品技術者会連盟)Congress カンヌ大会(2025年9月15~18日、フランス・カンヌ)にて発表したとのことだ。
Kirei肌AIは、肌の見た目の印象を顔画像から評価・可視化する技術であり、これまで製品評価や生活者向けの肌測定サービスに応用されてきた。これまでは、ほうれい線や目尻などの部位特有の変化や水分量、セラミド組成、コラーゲン密度など、肌内部の状態を推定できる仕様にはなっていなかったとのことだ。今回、これまでの学習データ形式である17.8mm×17.8mmサイズの“肌パッチ画像”に加え、20~80代の男女293名の顔画像から、特定部位を切り出した“部位別画像”計70,389枚を利用し、シワ・たるみ・水分量などを評価、推定する複数の機械学習モデルを新たに構築したという。
これにより、Kirei肌AIには計25の機械学習モデルが搭載され、肌表面の見た目から内部まで77項目におよぶ肌状態を評価、推定できるようになったとする(図1)。
これまで肌を評価するには、仮説を立てて試験を設計し、解析が完了するまでに数ヵ月の時間と数十名の研究員がかかわる必要があったという。しかし、機能拡充により、適切に撮影された顔画像データさえあれば、顔画像1枚あたり10分以下の解析時間で網羅的なデータを得ることが可能になった。現在は研究所内での運用も定着し、平均して月間のべ730枚の顔画像を解析。仮説から検証までのスピードアップを実現しているとのことだ。
また、過去に取得した膨大な顔画像データも、機能拡充したKirei肌AIで再解析できるという。取得時点では評価、推定できなかった水分量、皮脂量、ハリなどの肌状態に関する項目とメイクの仕上がりを同時に評価できるようになったことで、「ハリのない肌では、メイク後の肌でシワが目立ちやすい」などといった関係も、あらためて定量化できたとする。
今後、花王は人の目や精密機器と同等以上の肌評価の実現に向けて、Kirei肌AIの評価項目の拡張と推定精度のさらなる向上を継続して進めていくとのことだ。グローバルでの展開を見据え、さまざまな肌のトーンや肌特性に対応したデータ拡充も推進し、適用範囲を拡大。化粧品開発における時間およびコストの効率化を図り、美と価値観の多様化に対応する魅力的なモノづくりで、生活者の期待を超える商品開発を推進していくとする。
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