全社研修を強制的に実施 役員直下で機動性を担保
藤井(AIdiver編集部):まずはトヨタコネクティッドでの役割と参画の背景を教えてください。
川村(トヨタコネクティッド):現在、トヨタコネクティッドで主に生成AIの戦略・戦術設計と活用推進を担っています。元々は事業会社でUXデザインに携わっていました。生成AIに触れて「世の中が変わる」と感じ、当時勤めていた会社を辞めてAIと徹底的に向き合う期間を作ったのがそもそもの始まりです。
「AIに関わる仕事をしたい」と考えていたのですが、当時はまだ生成Aが世の中に認知され始めた頃。まったく転職先がなかったですね。そこで、自分が今やっていることを伝えまくって出会いの機会につなげようと思い立ち、毎週のようにイベントで短いプレゼンテーションをしていました。それを見ていたトヨタコネクティッドの方が声をかけてくださったんです。
藤井:トヨタコネクティッドのAI推進部隊は、どのように立ち上がったのでしょうか。
川村:私は2023年11月にジョインしましたが、当時はAI関連の取り組みはほぼ行われていませんでした。しかし、ChatGPTの登場などをきっかけに、社内で「AIを使ってみたい」という声がちらほら出始めていました。それらの活動を統括して推進するため、2024年4月にAI統括部として本格的にスタートしました。
目指すのは、セキュリティ面を含めて「守りと攻めの両方でAIを使えるような組織」。積極的かつ安心にAIを活用できる土台、たとえば人材やルール、データ基盤、開発基盤などを整えて「業務と人を変えていく」ことが最も大きなミッションです。
藤井:「AIを使ってみたい」との声があったそうですが、当初よりAIに対して興味を持っている社員の方が多かったのでしょうか。
川村:いえ、先行的な研究を行っている部署など、実際にはごく限られた社員が声を上げていました。全社的には「AIとは何?」という人のほうが多かったです。そのため、まずは人が変わっていかなければならないと思いましたね。
たとえば、当社は自動車のコールセンターを保有していたり、テレマティクス技術を用いた複数のアプリを展開したりしていますが、将来的にAI機能を組み込もうとした際、AIを触ったこともない人がいきなりチャレンジするのは難しいでしょう。
こうした状況から、AI統括部の立ち上げと同時に行ったのが「全社研修を強制的に行う」ことでした。他社の話を聞くとテスト的に一部署から始めるケースもあるようですが、当社は「全員がまずは触る。そして使えるようになる」というコンセプトで、研修内容を内製で作り上げました。
藤井:全社的な取り組みだと、経営層の理解も必要ですよね。役員の方々はAI導入に積極的だったのですか。
川村:そうですね。中には「これからAIをどんどん活用したい」と思ってくださっている役員の方もいました。AI統括部はその方の直下に配置を希望して実現し、意思決定の速さ、機動性を担保できたのも大きかったかもしれません。
