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AIを経営の中核に据えるイトーキ、「物流を止めない」予知保全システムを開発 個別最適が鍵に

日本オラクルとの協業で実現、2016年1月に本格提供へ

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「データが多ければいい」わけではない あえて個別最適が必要な理由

 予知保全システムを実現するには、当然データが必要だ。日本オラクルの井上憲氏は、AI開発における「業務ナレッジ」の重要性を強調する。

 AIの異常検知モデルを開発する際、イトーキが長期間にわたって収集・蓄積してきた「750基を超える設置実績サイト」の膨大なデータと、それに付与された業務知識が重要だった。物流設備は、設置されている場によって寒暖差やノイズといった環境差がある。そのため、単純なデータだけではAIが環境差を異常と誤認してしまうケースが発生するのだ。

「たとえば、ドーリーを動かすベルトの張力は、ゴム素材であるため夏と冬で位相差が出る。共通のAIモデルだけで見ると異常と判断するが、そこに業務ナレッジを適用すれば『これは単純な季節性の差分だから気にしなくていい』と判断できる」(井上氏)

 加えて重要なのが、AIを導入して終わりではなく、継続的にAIを更新していく考え方だ。井上氏は「AI開発にはデータは多いほうがいいとされるが、単純に大量のデータからモデルを作ればいいわけではない」と強調した。

 作成した単一の中央モデルを各サイトに展開しても、個別の環境差によってひずみが生じ、うまくはまらないケースが出てくる。そのため、モデル開発後、社会実装フェーズの中で個別最適化する必要があるという。

 イトーキは、保守サービス部隊の現場や実証実験からデータを得られる体制が整っていた。これに加えて、湊氏は「設備機器事業本部の堤(康次氏)の部隊には、SASを制御するソフトウェアを内製できるかなりの人数のソフトウェアエンジニアがいる」と語る。

 日本オラクル側では、AutoML技術を活用し、複数のモデル検証や特徴の選択、チューニングなどを自動化することで、開発と継続的な更新の最適化を支援している。今後は、クラウドに集約した集合知を各サイトに合わせて展開するハイブリッド構成を促進しつつ、異常検知後のオペレーション効率化のために、過去のエラーケースなどを活用する生成AIの導入も検討されている。

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この記事の著者

藤井有生(AIdiver編集部)(フジイ ユウキ)

 1997年、香川県高松市生まれ。上智大学文学部新聞学科を卒業。人材会社でインハウスのPMをしながら映画記事の執筆なども経験し、2022年10月に翔泳社に入社。ウェブマガジン「ECzine」編集部を経て、「AIdiver」編集部へ。日系企業におけるAI活用の最前線、AI×ビジネスのトレンドを追う。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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