2016年から全社でAI活用 すべての社員にアクセス権限を付与
マニュライフグループのAI導入は早かった。ChatGPTが世間をにぎわす6年前、2016年から本格的なAI活用をスタート。今では約200人のデータサイエンティスト、機械学習エンジニアを抱えている。北米とアジアで10ヵ国以上に事業を展開しており、グローバルでAI活用を管理しているという。同社のグローバルCMOであるレゲット氏は「すぐに機械学習のポテンシャルを感じ、すべての業務でAIを中心に据えると決めた」と振り返る。
「2016年から、AIをはじめデジタル領域に数十億カナダドルの投資をしてきました。その結果、生産性向上や顧客体験向上による売上増加など、2024年だけでもデジタル施策全体で6億カナダドル相当のビジネス価値が生まれています」
同社の個性は、当初よりマーケティング部門の配下にAI推進部門が存在している点にある。AIを、顧客との関係を深め収益機会を創出する戦略的ツールと位置付けた。社内でのAI活用が、最終的には顧客体験の向上と事業の成長に貢献すると考えているからだ。マーケティング部門がAI活用をリードし、他部門と連携しながら営業支援や社員の生産性向上を推し進める体制となっている。レゲット氏は「今ある機会を活かして、AI領域での地位を確立したい」と意気込む。
「多くの競合他社は、AI活用に関してまだPoCの段階でしょう。一方で、当社には既に多くのユースケースが存在しています。もちろん、日本市場でも大きな可能性を感じており、グループ全体で生産性を向上していくつもりです」
昨今の大きな取り組みとして、マニュライフグループでは2024年、社内向けに独自の生成AIアシスタントツール「ChatMFC」の提供を開始した。100%の社員がアクセスできるこのツール。オンライン上の情報だけでなく、直接的に業務に関係のある社内データも活用可能だ。コンテンツの翻訳やドキュメントの要約、メールの作成、業務プロセスに関するアドバイスなどを通じて、社員の業務をサポートしている。
加えて、同社ではエンジニア向けや営業向けのように、専門分野に合わせたAIツールも開発している。これらにより、新たな商品・サービスの市場への投入スピードを加速するという。
「たとえば、営業向けのAIツールでは、営業社員2,200名に対してパーソナライズ化された顧客の情報やニーズを提示することが可能です。これによって、営業社員が顧客により良い提案ができるように後押ししています」
ChatMFCをはじめ、複数のAIツールを導入することで、同社では日本法人も含めAI活用率が2024年時点で75%まで伸びている。新たな技術の導入に慎重な面もある金融・保険業界において、高い数字といえるだろう。
