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AIがもたらす未来と企業の現実解

全社員AIワーカー化計画、始動。クレディセゾンのトップと現場を動かす「攻めだけじゃない」AXの全貌

CDO/CTOの小野氏が明かした「CSAX」戦略発表の裏側

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 AI活用のメリットは、いまだに業務効率化や省人化だと捉えられるケースが多いだろう。これに対して、クレディセゾン CDO/CTOの小野和俊氏は「AIの真価は創造性の向上にある」と断言する。AI導入の判断には必ずといって良いほどROIが求められるが、活用推進者はこの壁をどう乗り越えAIの定性的な価値を伝えるべきか。そして、トップを含めた全社員にAI前提の働き方へシフトしてもらうには。クレディセゾンのAIトランスフォーメーションに迫る。

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社長、AIを使い倒してください──AXを後押しする「体験」の力

──2025年9月にAI活用による「CSAX(Credit Saison AI Transformation)戦略」を発表されました。「全社員AIワーカー化」を目標に掲げるなど思い切った取り組みですが、何がその背景にあるのでしょうか。

小野 まずは私自身が「AIによる革命は間違いなく本物」だと強く実感したのが、大きなきっかけです。AIを前提にしない仕事はなくなる──そう確信しています。

 とはいえ、私が思っただけでは会社全体を変えることはできません。そのため、今年の6月~8月まで各部署から集まった315名を対象に、ChatGPT Enterpriseを導入し検証を行いました。結果的に、一人当たり年平均170時間の業務をChatGPT Enterpriseが代替できると確認できたのです。つまり、AIで仕事が変わる予感は個人の感覚ではなかったということ。AXをやらない手はありません。

 現場に使ってもらうなら、経営陣もジブンゴト化して使っていかなければ。社内検証とともに、社長にも「1番AIを使い倒してください」と伝えました。そして、1ヵ月半で文字どおり使い倒してくださいました。現在、ChatGPT Enterpriseで提携検討先の情報を訪問前にまとめたり、事業に関するアイデアの壁打ちをしたりしているそうです。

株式会社クレディセゾン 取締役 (兼) 専務執行役員CDO (兼) CTO 小野和俊氏
株式会社クレディセゾン 取締役 兼 専務執行役員CDO 兼 CTO 小野和俊氏

──業務効率化がAI導入の決め手だった、ということですね。

小野 実際には業務効率化がAI活用の本質ではありません。検証を行う中で、企画・マーケティング部門ではキャンペーンのコピーをChatGPT Enterpriseに相談するなど、95%が「クリエイティブに仕事ができるようになった」と回答しました。ほかにも、IT部門の88%が「仕事の満足度が向上した」と答えています。業務の工数削減ではなく、創造性を高められる点がAI、特に生成AIの本来の強さです。

 しかし、これらの効果は金額に換算できません。AI導入の判断で求められることが多いROIでは説明できなんです。AXを推進する人たちは、定性的な面に価値があると気づいている。でも数字で伝えられない。これが難しい点ですね。

 定性的な価値を経営層に伝えたい気持ちもわかりますが、AXを進めるには事前に工数削減や業務効率化の文脈で定量的なメリットを示しておくことをおすすめします。事前にROIを説明できていれば、あとは体験してもらえば本人がAI活用の意義を感じられるからです。あえて説明しすぎないのも、重要な視点でしょう。

──そうした体験による意識変革も重要ですが、技術面での体制整備も不可欠です。どのように「AI-Ready」な状態までもっていったのでしょうか。

小野 これまで推し進めてきた内製開発が功を奏しました。当社は約10年で2,000億円以上かけ、2017年に基幹システムを刷新しています。私がCTOに就任した2019年からは、基幹システムの周辺システムまで内製化を進めてきました。2019年の内製開発チーム設立当初、エンジニアは私1名でしたが、現在は200人規模の体制となっています。

 2028年春にはAIコールセンターを内製しオープンする計画です。コールセンターは多くの企業がAIによって省力化できると考えている領域かと思います。ですが、AIコールセンターを単独で導入できるわけではありません。既存の関連システムとの接続が必要になります。

 現在、我々はAIコールセンターのシステムを構築している最中ですが、接続が必要な関連システムも以前から内製化を進めてきました。つまり、柔軟かつ迅速に対応できる環境が整っているのです。 

 事前にこうした取り組みを行ってきたことで、比較的多くのシステムが既に「AI-ready」な状態となっていました。日々の改善はボトムアップから行いますが、このような大きな判断はトップダウンでないとできない。だからこそ、経営層の意識も重要なんです。

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なぜ現場がジブンゴト化できないのか 浸透のきっかけは「田中さん」

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この記事の著者

藤井有生(AIdiver編集部)(フジイ ユウキ)

 1997年、香川県高松市生まれ。上智大学文学部新聞学科を卒業。人材会社でインハウスのPMをしながら映画記事の執筆なども経験し、2022年10月に翔泳社に入社。ウェブマガジン「ECzine」編集部を経て、「AIdiver」編集部へ。日系企業におけるAI活用の最前線、AI×ビジネスのトレンドを追う。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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