SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

AIがもたらす未来と企業の現実解

約10年前からAI推進 世界中の社員を巻き込むマニュライフGの教育システムと独自開発のツール活用術

金融・保険業界のAIリーダーに──グローバルCMOが語った理想像

  • Facebook
  • X
  • note

AIを評価するAIも 顧客のために生産性を上げ続ける

 マニュライフグループがAI活用において重視しているのは、顧客体験の向上だ。特にコンタクトセンターで、AIがその力を発揮している。同社はオンライン上のチャットでも顧客対応をしているが、まだまだ電話で会話をしたい顧客も多い。そのため、電話対応をするオペレーターの生産性をAIによって上げ、「的確に答えられる」という自信をつけてもらうという。

 具体的なユースケースが二つある。一つ目がコンタクトセンター用のAIプラットフォームだ。顧客から電話がかかってくると、オペレーターはまず顧客の状況を把握しなければならない。素早く理解して対応しなければ、顧客体験が下がる可能性もある。そこで、本プラットフォームを通じて、AIが迅速に顧客の電話の内容を要約し、オペレーターに提示する。オペレーターは、メモを取りながら対応する必要がなくなり、顧客対応に集中することが可能だ。

 二つ目が、「complex contract lookup(コンプレックス コントラクト ルックアップ)」と呼ばれるAIツール。以前は、同社のオペレーターが顧客の課題を解決するために複数のシステムを開いて、必要な情報を取得する必要があった。細かい契約の内容まで確認しようとすると、時間がかかり顧客を待たせてしまう。この課題を解決するために、マニュライフグループでは情報取得を支援するAIアシスタントを開発した。オペレーターが「○○の情報を知りたい」と入力すると、AIアシスタントが、関連するシステムから顧客の保険契約などの情報を取得しオペレーターに提示する仕組みだ。

 加えて、同社ではこれらの「セカンドモデル」も開発している。AIの回答が正しいかどうかを評価するAIだ。AIの回答を自動で検証することで、ハルシネーションやエラーを防ぐという。

「このようなAIツールにより、問い合わせへの対応時間を大幅に削減でき、顧客体験が上がります。オペレーターも、自信をつけられる。社員にとっても顧客にとってもメリットが大きいです。こうした動きを、日本市場にもより拡大していきます。日本でも、AI領域でリーダー的な存在になりたいのです」

 マニュライフグループのように、日本でも各社がAI活用を推進しようとしている。しかし、現場からの反発など、ハードルを感じている経営層や推進担当者も多いのではないだろうか。そうした人々に向けて、レゲット氏は最後にこうエールを送った。

「かつてのインターネットをはるかに超える勢いで、AIは浸透しています。AIを受け入れなければ、企業は変化する市場にはついていけないでしょう。AI推進は、上層部から発信するのが重要です。変革を恐れず、AIを戦略的な資産と捉えてみてください」

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • note
AIがもたらす未来と企業の現実解連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

藤井有生(AIdiver編集部)(フジイ ユウキ)

 1997年、香川県高松市生まれ。上智大学文学部新聞学科を卒業。人材会社でインハウスのPMをしながら映画記事の執筆なども経験し、2022年10月に翔泳社に入社。ウェブマガジン「ECzine」編集部を経て、「AIdiver」編集部へ。日系企業におけるAI活用の最前線、AI×ビジネスのトレンドを追う。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

  • Facebook
  • X
  • note
AIdiver(エーアイダイバー)
https://aidiver.jp/article/detail/31 2025/11/04 08:00

広告を読み込めませんでした

広告を読み込み中...

アクセスランキング

アクセスランキング

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング