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大手非鉄金属メーカー・古河電工が明かすAI活用の現在地 「使い方を教えられる人を育てる」研修の裏側

AI活用のギャップを乗り越える新施策「AIプロモーター育成プログラム」とは


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 光ファイバ・ケーブル、海底用電力ケーブルをはじめ、国内外で高いシェアを誇る大手非鉄金属メーカーの古河電気工業(以下、古河電工)。DXの一環として、社内でのAI活用を積極的に推進している。同社が今年度から特に力を入れているのが、社内でAI活用を教えられる人材の育成だ。現場起点で自律的かつ継続的な生産性の向上を目指す。

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60%が「AIの活用機会あり」も「週1以上活用」は20% ギャップをどう埋めるか

 古河電工は、2023年8月に社内向けにAIを本格導入した。現在は、チャットサービスである「OneFIT生成AIチャット」、Microsoftが提供するAIアシスタント「Microsoft Copilot」の活用が進んでいる。今後は、Microsoft Copilotをメインツールとして普及させる方針だという。

 こうした取り組みを推進しているのが、戦略本部 デジタルトランスフォーメーション&イノベーションセンター(DXIC)だ。同部の久保木愛氏は、AI活用推進の背景をこう話す。

「生成AIは全従業員が使える汎用的なツールであり、自律的な業務改善の基盤となります。生成AIを通じて業務改善の成功体験を積み重ねることで、組織風土の向上につながると考えています」(久保木氏)

古河電気工業株式会社 戦略本部 デジタルトランスフォーメーション&イノベーションセンター(DXIC) 企画室 デジタル人材開発課 課長 久保木愛氏
古河電気工業株式会社 戦略本部 デジタルトランスフォーメーション&イノベーションセンター(DXIC) 企画室 デジタル人材開発課 課長 久保木愛氏

 そもそも、同社は2年前までノーコード・ローコードツールの活用を推進していた。しかし、一般社員による開発にはやはりハードルがあった。そこで久保木氏らは、生成AIにより自然言語で指示出しや質問ができれば、市民開発が進むのではないかと考えた。

 具体的な取り組みとして、同社は全社向けのeラーニングの提供、部課長が参加必須のセミナーの実施などを行ってきた。これにより、「生成AIが業務で使えそう」と考える社員が増えているという。

 一方で、2024年12月に行われたアンケートでは、生成AIを週に1回以上「活用可能な機会がある」と回答した社員が約60%なのに対して、実際に週に1回以上活用している社員の割合は約20%にとどまった。久保木氏は「このギャップこそ、当社の成長のチャンス」と語る。

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 現時点で、本社で主にデスクワークを行う社員の間では、AI活用が比較的進んでいる状態だ。しかし、工場勤務の従業員など生成AIを使う機会が少ないケースもあり、活用にはバラつきがある。この課題に対して、業務内容を問わず全従業員が週に最低2回以上は生成AIを活用できる状態を目指し、DXIC主導でサポートを強化している。

 具体的な施策として、同社は2024年4月から「AIプロモーター育成プログラム」を開始した。業務プロセスをデジタル化し、生産性向上を推進する人材を課ごとに育成する同プログラム。東進ビジネススクールが研修内容の策定などに関わっている。参加者は、研修を通じてプロンプト作成スキルや社内外の改善事例の知見を身に着ける。

 これにより、2030年に各課が業務プロセスのデジタル化を自律的に推進し、継続的に生産性を向上している状態を実現するという。2025年度は第3回目までプログラムを実施し、合計で約100名のAIプロモーターを育てる。同社は、3年かけて約350ある全課で“AIプロモーター”を浸透させる考えだ。

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研修後にAI活用率が25%上昇 ユースケースも多数

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この記事の著者

藤井有生(AIdiver編集部)(フジイ ユウキ)

 1997年、香川県高松市生まれ。上智大学文学部新聞学科を卒業。人材会社でインハウスのPMをしながら映画記事の執筆なども経験し、2022年10月に翔泳社に入社。ウェブマガジン「ECzine」編集部を経て、「AIdiver」編集部へ。日系企業におけるAI活用の最前線、AI×ビジネスのトレンドを追う。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://aidiver.jp/article/detail/157 2025/10/31 17:39

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