AIエージェントからエージェンティックAIへ 組み込みの理想像
2024年10月に「Agentforce」を発表後、Salesforceは速いスピードでアップデートを続けてきた。2025年6月に「Agentforce 3」へと進化させ、さらに10月に公開したのが新たな統合プラットフォーム「Agentforce 360」だ。次の4つの要素で構成されており、Agentforceの集大成ともいえる。
- 自然言語でAIエージェントを設計・運用できる環境「Agentforce 360 Platform」
- 非構造化データや構造化データ・分析結果などをAIエージェントにコンテキストとして提供する「Data 360」
- 各業務にAIエージェントを組み込むための「Customer 360アプリ」
- 人間とAIエージェントが協働するための会話型インターフェイス「Slack」
Agentforceの開発をリードしてきたジョン・クセラ氏は「Salesforceでの17年間のキャリアで最もエキサイティングな発表だ」と話す。
併せて同社は「エージェンティック エンタープライズ」という概念を大々的に打ち出した。これは単にAIエージェントを導入して個別最適で活用する状況とは異なる。AIエージェントを人間の業務に置き換えるツールとしてではなく、「協働者」として組織全体に組み込む考え方だ。また、企業は従業員の作業の支援であれ顧客対応の支援であれ、ミッションクリティカルな問題を解決するためのAIエージェントを構築しなければならない。
クセラ氏は、こうしたAIエージェントを「どこで使うか」も重視している。必ずしもSlackがインターフェイスとは限らない。顧客対応をするAIエージェントであれば、ユーザーが見ているウェブサイト、SNS、SMSといったあらゆるチャネルで活用できる状態が理想的だ。従業員や顧客が「日常的に利用している場所」でシームレスに機能する必要がある。
たとえばChatGPTを入口としてAIエージェントを利用したい場合もあるだろう。実際にSalesforceはOpenAIと提携し、ChatGPTの画面からAgentforce 360 Platformにアクセスできるようにする予定だという。
ここで活きるのが、Salesforce製品の核である「オープン性」と「モジュール性」だ。企業がAgentforce 360 Platformの一部の機能を利用しながら、既に導入している他サービスやプラットフォームと連携することが可能となっている。将来的には「セキュリティを確保した上で一般消費者向けのChatGPTと連携するビジョンも見据えている」とクセラ氏。これにより、あるブランドのAIエージェントにChatGPT経由で顧客が問い合わせするといった体験の提供が実現する。
そのために同社は、LLM(大規模言語モデル)と外部ツールやデータを連携する共通規格であるMCP(Model Context Protocol)にも積極的に投資している。クセラ氏は「AIエージェントの展開をより容易にしたい」と強調した。
このようなエージェンティック エンタープライズの事例は、欧米で徐々に生まれているという。一方で、日本では現在AIエージェントの導入を検討している段階の企業が大多数だろう。これまでの技術と比較すると、進化の速さから日本での浸透も早いと予測されるが、具体的にどのようなステップを踏めば追いつけるのだろうか。
