ソフトバンク:一人100個のGPTs作りで「AIと共に進化する」

企業セクター大手でグランプリを受賞したソフトバンクは、人的資本経営を基軸とした全社生成AI活用の仕組みを構築した。通信事業を中核とする同社は、2030年には次世代社会インフラの企業となることを目指し、AIを経営の中枢に据えている。
同社担当者は「AIを使うのではなくて、AIと共に進化して、事業と人の価値を最大化する」と語り、社員一人ひとりの力を引き出すことがAI戦略の根幹にあることを強調した。同社では、社員の成長と会社の成長を双方向に循環させる仕組みを作り、機会を与えて社員が挑戦し、社員が生み出した成果が会社を成長させ、その成長がまた次の挑戦へとつながるサイクルを高速で回し続けている。
具体的な取り組みとして、全社員向けAI教育プログラム「AIキャンパス」を構築し、レベル1からレベル3まで段階的に体系化した学習機会を提供する。2025年7月時点でAI関連資格の保有者は全社の約13%に達した。また、グループ全社員を対象とした生成AIコンテストは累計26万件を超える提案を集め、特許出願件数は1万件超となっている。
さらに特徴的なのが「一人100個GPTsを作ろう」という取り組みだ。各部門でレースをしながら100個を目指して横で声をかけ合いながら出すことで、身近なレシピ作成から業務改善まで、生成AIに慣れる環境を作り出した。すでに1,000名以上の社員がAIやクラウドなどの新事業、新領域にシフトしており、社員自身が手を挙げてリスキリングと共に新しい領域に挑戦している。
博報堂DYホールディングス:「AI逆メンタリング」で壁を壊す

準グランプリを受賞した博報堂DYホールディングスは、「人間中心のAI」を核とした全社変革を推進している。同社が直面していた課題は、得意先から「AIを使うのなら10%値段下げられないか」と言われる状況と、AIを使う力と業務知識を持つ人の間にある壁だった。
この課題に対し、同社が導入したのが「AI逆メンタリング制度」である。一般的なメンタリングとは逆に、若手10名が役員9名にAIを教える仕組みを作った。最初の3週間では実際にNotebookLMなどのツールの使い方を学び、次のステップでは企画書生成や法務のリスクチェックなどの具体的な業務への適用を進め、10週間の中で戦略的に思考が深まっていく設計とした。
同社CCOの西山氏は「仕事を奪うのではなく、AIは人と人との絆をこれまでにない形で深めてくれる」と語り、AIを導入したことで人と人との距離が近くなったと強調する。同社のスター社員でコピーライターの細田氏の発想法をAI化した「細田AI」は半年で4,000時間を削減し、自然にできたAIコミュニティが数えきれないほど広がっている。