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OpenAI元幹部が語る「ChatGPT誕生の舞台裏」と、「エージェント×Web」時代の競争軸のシフト

Tanium 「Converge」現地レポート:元OpenAI ザック・キャス(Zack Kass)氏講演

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 元OpenAIで市場開拓責任者を務めたザック・キャス(Zack Kass)氏が、2025年11月米フロリダ州オーランドで開かれたTaniumのイベント「Converge 2025」で講演を行った。GPT-3が市場で苦戦した理由、ChatGPTが世界を変えた転換点、そしてAIエージェントの時代に企業が直面する競争軸の変化について語った。(取材協力:タニウム)

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GPT-3時代、市場の反応は冷たかった

(左より)ハーマン・カウア(Harman Kaur)氏(モデレータ) Tanium inc.Senior Vice President, Strategy, & AI/元OpenAI ザック・キャス(Zack Kass)氏

 2021年前半、キャス氏がOpenAIに入社した当時、GPT-3 APIはAI業界内で高い評価を受けていた。当時Go To Market(GTM)責任者だったキャス氏は、投資家や企業のCEO、CTOにGPT-3のデモを見せて回っていた。しかし、市場の反応は冷たかった。

 「デモが終わると、CEOは必ずこう言いました。『それだけ?』。私たちが『どれくらい欲しいですか?』と聞くと、『いらない。帰ってくれ。サムによろしく』と」(キャス氏)

 当時のGPT-3は、100万トークン(おおよそ75万語)あたり10ドルと高額で、動作も遅く、精度も今ほどではなかった。「企業のバカどもは分かっていない」と思ったこともあったという。

「見下していた」ラッパー企業の成功

 一方で、GPT-3のAPIをうまく活用して成功している企業がいた。自分たちで先端モデルを開発するのではなく、OpenAIのAPIを利用して一般向けのサービスを提供する企業群だ。

 AI業界では当時、こうした企業を「ラッパー(wrapper=包むもの)」と呼び、やや侮蔑的に扱う風潮があった。「LLM(大規模言語モデル)の上に薄い機能を載せただけ」だと。キャス氏自身も、そう見下していた時期があったという。

 しかし、このラッパー企業たちは、数千万ドル、やがてほぼ数億ドルを稼いでいた。「何かが起きている」とキャス氏は感じた。

 2022年半ば、GPT-3.5がリリースされた。GPT-3よりもはるかに優れ、はるかに速く、はるかに安かった。「完全なブレークスルーだ」とキャス氏は期待した。しかし、OpenAI自身の収益は期待ほど伸びなかった。

 「市場では、商品を安く仕入れ、適正価格で販売することが実際の価値を生み出す。同じように、GPT-3を知らない人々に使いやすい形で届けたラッパー企業たちは、価値を提供していたのです」(キャス氏)

 市場での価値を考えたとき、ラッパー企業を見下した見方は誤っていたことにキャス氏は気づいた。

ChatGPT誕生、「会話型」へのピボットが成功を生んだ

 転機は、サム・アルトマンCEOの判断だった。

 「もっとシンプルなインターフェースで公開すべきだ」──彼はそう決断し、開発チームに指示を出した。企業向けAPIとして提供するだけではなく、誰でもブラウザからアクセスできる対話型インターフェースを作る。「ChatGPT」の誕生だった。

 皮肉なことに、ChatGPTのインターフェースは1990年代から存在するチャット形式そのものだ。インターネット草創期の「AOL」のインスタントメッセンジャーと何も変わらない。

 「歴史は韻を踏む。魔法はシンプルさの中にある」(キャス氏)

 つまり、OpenAIが「ラッパー」と見下していた企業たちこそ、「体験」の重要性を証明していたのだ。どれだけ優れた技術も、人々が「使いたい」と思う体験に落とし込まなければ、世界は変わらない。

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知能は「水道」や「電気」のようになる

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この記事の著者

京部康男(AIdiver編集部)(キョウベヤスオ)

ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineとAIdiverには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail ...

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