頭脳の米国・ハードウェアの中国 フィジカルAIの現在地
2026年1月の発表後、3月には三菱電機とともにフィジカルAIの開発強化を明かした燈。現場では着々と取り組みが進められている。
OpenAIがGPT-3を公開したときと同じ衝撃が、フィジカルAIの世界で起こっている──そう語るのは、同社でフィジカルAI領域を手掛ける石本幸暉氏だ。数年前に多くの人々が抱いたであろう「AIが人を超えるかもしれない」という予感。同じものをフィジカルAIに感じているという。実際、製造現場では期待値が高まっている。
とはいえ、導入ハードルは高いのが現実だ。各地で研究開発は進められているが、汎用性やスピードはまだ発展途上にある。燈の執行役員を務める米田泰輝氏によれば、現状では人間の3分の1程度のスピードで一部の作業がこなせるレベル。理想と現実のギャップは認識しておくべきだろう。
「現時点でフィジカルAIをROIを得られる形で実装できている会社は非常に少ない。ヒューマノイドなどロボットの価格も非常に高いです。人を雇った場合と比較してROIが高くなるかと聞かれれば、実態はそこまでではありません。ただ、視点を変えると、人間よりも作業スピードはゆっくりですが、24時間動きつづけられるメリットもあります」(米田氏)
加えて、今後3~5年で状況が大きく変わるという見方もある。石本氏は、精度が上がるタイミングとハードウェアの価格が下がるタイミングが、数年の間にちょうど重なると予測する。
「ハードウェアは、中国を中心にサプライチェーンが存在しています。自動車が普及して値段が下がった状況と同じように、価格は落ちていくはずです。また、フィジカルAIに何をどう学習させるかは研究段階ではありますが、精度は確実に上がっていくでしょう」(石本氏)
米田氏も「個別タスクであれば、さらに短い期間で代替が進む」と話す。
「人間が行うような複雑なタスクの処理には時間がかかりますが、たとえば工場で複数のものをピックアップするといった作業であれば、チューニングしながら1~2年で適用範囲がぐんと増えると思います。すでに日本の製造現場に自動化技術は導入されているものの、産業用ロボットでできなかった領域がまだ残されている。チャンスは見えてきています」(米田氏)
一方で、フィジカルAIの話題で見逃せないのは米国と中国の動きだ。「頭脳は米国、ハードウェアは中国」と石本氏はいう。
「米国は世界でもトップレベルの研究者を集めています。そして中国は、多くの人を雇ってデータ収集とハードウェア構築を行っています。繰り返しになりますが、中国は深センを中心にサプライチェーンが確立されているため、他国よりも安価に製造できる強みがある。これは米国でもなかなか勝てないのです」(石本氏)
