「生成AI」というワードが消え、「AIエージェント」一色になった
押久保:先日、サンフランシスコのカンファレンスに行かれたそうですね。
福田:毎年海外へ行き、カンファレンスや現地企業との個別ミーティングに参加しています。直近で参加した投資家向けカンファレンスでは、約200社が参加し、各社のCEOやCFOが登壇し、各社のビジネス概況を一気に見渡せるので、毎年欠かさず参加しています。
押久保:今年のカンファレンスでは、どのような変化を感じましたか。
福田:去年までは、オープニングの質問が「御社の生成AI戦略はどうですか」でした。それが今年は「生成AI」という言葉を使う人がほぼいなくなって、「AIエージェント」になっていました。
ユースケースもまったく変わりました。去年までは要約、翻訳、コーディングなどが中心でしたが、今年は営業のリサーチや見込み客の発掘、マーケティング、コンタクトセンター、さらにリーガル領域まで広がっていて、実装段階を経て実際に現場で稼働している実例が多い印象でした。
押久保:マネタイズの議論もだいぶ変わりましたか。
福田:去年の段階ではマネタイズが大きなテーマでした。AI機能をリリースしても顧客に値上げを要求できない。既存機能のオプションという位置付けに過ぎず、どうやったらお金を払っていただけるのかという話ばかりでした。しかし、今年はそんな議論をしている人はほとんどいませんでした。むしろAIエージェントネイティブな会社が次々と出てきています。
福田康隆(ふくだ・やすたか)。早稲田大学卒業後、日本オラクルに入社。2001年に米オラクル本社に出向。2004年、米セールスフォース・ドットコムに転職。翌年、同社日本法人に移り、以後9年間にわたり、日本市場における成長を牽引する。専務執行役員兼シニアバイスプレジデントを務めた後、2014年、マルケトに代表取締役社長として入社。2019年、アドビシステムズに買収によりアドビシステムズ専務執行役員マルケト事業統括に就任。2020年1月より、JAPAN CLOUDのパートナーおよびジャパン・クラウド・コンサルティングの代表取締役社長に就任。著書に『THE MODEL』(翔泳社、2019年)。
AIエージェントを組織図に組み込む。IT部門が人事部門へ
押久保:昨年のCESで、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOが「IT部門が人事部門になる」と発言していたのが印象的でした。お話を聞くとかなり現実味がありますね。
福田:もう現実に起きていることだと思います。今、アメリカで大きなテーマになっているのは「AIエージェントをどう組織図に組み込むか」ということです。AIエージェントは1体で何でもこなすわけではなく、見積、契約、リサーチなど業務プロセスを分解して、特定のタスクに特化させないと機能しません。
押久保:具体的には、どのようにAIエージェントを組織に組み込んでいくのでしょうか。
福田:たとえば営業組織であれば、営業は顧客との対話や関係構築、交渉に集中する。初期のリード対応や顧客のリサーチ、アカウントプランの作成、過去の類似商談の抽出などはAIエージェントが担当する。
また部門全体でHuman-in-the-loopとして承認、例外対応などを行う管理者を置くといった組織編成が考えらえれます。このように、人間とAIエージェントを組み合わせた組織図をどう設計するかが、これからの経営の重要テーマになってきます。
押久保:AIエージェントのオンボーディングにも時間がかかるという話がありましたね。
福田:カンファレンスで聞いたコールセンターのソリューションを提供している会社の話では、AIエージェント1体を稼働させるまでに60日間のオンボーディング期間が必要と話してました。人間と同じですよね。すぐに戦力にはならない。ただし、これまでは離職されると新たに採用して教育する時間とコストがかかってましたが、AIエージェントの時代にはそのリスクが無くなります。
また、データの質も重要です。コールセンターはFAQや製品ルール、膨大なコールデータが蓄積されているので、AIエージェントの導入に向いている分野です。一方、営業データは主観的でバラバラなことが多く、そのまま活用できないケースが目立ちます。データが大事と言われ続けていますが、企業にとってこれまでデータの整備に正しく投資をしてきたかが問われます。
