AI費と人件費を並べて見る時代 最適な経営体制とは
──これまでCHROを務めてこられましたが、6月1日付でCAXOにも就任されました。人事領域とAX領域の兼務ということになりますが、どのような意図があるのでしょうか。
Sansan 大間祐太氏(以下、大間):「AIファースト」を全社テーマとして掲げ、走りつづけてきた昨年。その中で、人事がAXを推進する体制が最も親和性が高いと感じたのです。
AXのスタートにおいて重要だったのは、AIネイティブなカルチャーをどう生むかという問いでした。社内のカルチャー作りは、人事のミッション。そのため、まずは人事本部の直下に、人事・情シス・R&Dの3部門から構成された「AIオンボーディングプロジェクト」を立ち上げました。ここを出発点に、現在はAI Enablement室として組織化しています。
これまでもさまざまな施策を行ってきて、AI活用率自体は100%にまで伸びています。削減できた業務時間は、少なく見積もっても年間10万時間。一定の手応えがあります。では「次のフェーズは」と聞かれれば、AI投資をいかに業績に直結させるか。そう考えたとき、今までの体制から一歩進めてCAXOを設置したほうがいいという結論に至りました。
振り返ってみても、非常に合理的な判断だったと思います。AXを大胆に進めていくとなると、組織の組み替えは避けられません。AI前提な組織を作り、その中で最適な業務プロセスとは何かを考えるためにも、人事と一体であるほうがいい。かつ、形としてCHROがCAXOを兼任したほうが意思決定のスピードがぐんと上がります。
人件費とAIのトークン使用料を並べて分析する、社員だけでなくAIエージェントもマネジメントしていく……。AIを労働力や人の能力を拡張するものと捉えたとき、人事が管掌したほうが価値を発揮すると思うのです。これが人事の新しい形ではないでしょうか。
──たしかに、海外ではAIも社員の1人と換算して人件費の一部に捉える企業が現れ始めました。同じことが日本でも当たり前になるのでしょうか。
大間:AIにかかるコストと人件費を並べて見る時代になるでしょうし、そうあるべきだと思っています。
当社は前年度の数倍規模でAIに投資していく予定ですが、人件費に置き換えると、かなりの新規採用をする場合と同じインパクトがあります。その分、大きな成果を出していかなければならない。つまり、売上に対するAI費+人件費の割合が、過去の売上高人件費比率より下がっていく必要があります。そうでなければ、従来どおり人を採用したほうがいいという話で終わってしまいます。人事、そして経営の重要指標として追うべき数字でしょう。
──具体的には、どのタイミングで売上高人件費比率が下がってくると見ていますか。
大間:意外にも、長い時間はかからないでしょう。AI投資をすべて回収できるかどうかは別の問題ですが、私自身の予測では、数年以内にはAI費+人件費の割合が過去の売上高人件費比率を下回ると見ています。今までより少ないリソースで多くの売上を生んでいる状態です。
