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「FDE」という言葉が混乱を招いている? 日立の展開は
博報堂DYホールディングス CAIO 森正弥氏(以下、森):SIの現場はAIによってどう変わってきましたか。
日立製作所 吉田順氏(以下、吉田):さまざまなAI企業と提携しながら各AIモデルをとにかく試しています。一方で、当社が担っているシステムは金融や保険などミッションクリティカルなものが多いため、何かあったときに「AIが作ったものだからわかりません」とはいえません。
前提として、当社では「属人化をやめる」「きっちりレビューをして、人間が理解できる形にする」という2つを重視しています。今は属人化を解消するために、フレームワーク化を継続的に進めているところです。フレームワークに従えば、誰でも同じものが作れる状態を目指しています。
また、AIのアウトプットを人間が後で把握できるようにレビュー工数を増やしています。レビュー時にもAIがアシストはしてくれますが、「中身を一切見ていません」といったことはまったくないです。すべて把握するようにしています。
そのため、生産性としては2027年までに全体で30%向上としています。対象としているシステムがミッションクリティカルである以上、慎重に進めている側面もあります。
森:「ミッションクリティカルである以上は慎重であるべき」という点は、おっしゃるとおりだと思います。あまりイメージがないかもしれませんが、実は当社も一部クライアントの経理システムや業務システムの開発をAI駆動で請け負っており、そこから、日立グループにはAIの慎重な活用に関するノウハウもまたあると推察します。
当社の開発業務も、AIによって想像以上に生産性が上がっているのですが、人間のレビューをどこまで介入させるかは葛藤があるんです。あえて人間のレビューを挟まないというチャレンジも、1度はしてみたほうがいいのではないかと。しかし、その方法をどう設計するかは難しい。日立グループが対象とする社会インフラのようなシステムは、特にハードルが高いですよね。
吉田:一方で、ミッションクリティカルなシステムだけを作っていればいいのか、という考えもあります。クライアントへより大きな価値を提供していくために、どのような形が考えられるか。たとえば最近は、FDE(Forward Deployed Engineer)として何ができるかをかなり議論しています。直近でも発表を行っていますが、複数のパートナーと連携しながら、当社のFDE力を強化しています。
ただ、FDEという言葉が世の中でちょっとした混乱を招いているのも事実です。従来の常駐SEと変わらないという人もいれば、まったく異なる価値があると考える人もいる。自社のデータサイエンティストたちをFDEと言い直す企業も現れています。当社では方向性を決めて、その価値を検証している段階です。その中で、FDEの実践にはさまざまなパートナーの力を借りる必要があると感じ始めています。
森:以前、グローバルAI企業のFDEのヘッドに、企業に散在する異種混合データをAIに連携させるアプローチについてどう考えているのか尋ねた際、「それもAIに聞けばいい。うちのFDEならそうする」という答えが返ってきたんです。これがAIネイティブカンパニーかと、衝撃を受けました。つまり、FDEはAIの実装そのものだけでなく、AIとの伴走カルチャーをクライアントに浸透させる役割も担うということでしょうか。
吉田:なるほど。当社の場合は、FDEの展開においてドメイン知識を重視しています。たとえば、銀行や保険にAIを実装する際、当社の経験やITおよびSIの知識を生かして価値を提供できます。また、製造業や鉄道、電力領域でフィジカルAIを展開するには、AIの知識だけではなく、現場知識、機器・設備やロボットの知識、そして全体をインテグレーションしてどう動かすかという知識も求められます。プロジェクトの中でやらなければならないことがあまりにも多い。加えて、AIモデルも世界基盤モデル、大規模言語モデル、ロボット系モデルがありますし、物理的な動きも発生します。では、現場が分かりやすく使えるAIとはどのような形か……。
ここまで範囲が広いと、さすがに一人だけでは対応できません。そこで、ポッドチームのようにFDEをプロジェクトメンバーとして採用し、かつ当社のドメイン知識を生かせる体制を組めれば、すぐに価値提供ができるのではないかと考えているところです。
