SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

「AX Day(エーエックス・デイ)」は、翔泳社の「AIdiver(エーアイダイバー)」が開催するオンラインイベントです。表面的なAI活用の事例ではなく、事業成長にまで結びつく“AIトランスフォーメーション”の在り方を徹底深掘りします。

直近開催のイベントはこちら!「AX Day 2026 August」

CxOトーク

日本のFDEは“ラベル”を貼るだけで終わるのか──日立が語った理想像 成功の鍵は「エコシステム」

【対談】日立製作所 吉田順氏×博報堂DYホールディングス 森正弥氏 -後編-

  • Facebook
  • X
  • note

 各社がAI前提の企業経営へと転換しようとする中、それを率いるCxOたちは何を考えているのか。博報堂DYホールディングスのCAIO 森正弥氏が、各業界のトップランナーに取材する対談シリーズ。今回のゲストは、日立製作所のAI改革を率いるDSSセクター Deputy Head of AI CoE 兼 CAXO 吉田順氏だ。フィジカルAIへの挑戦、組織としての変革を聞いた(後編)。

  • Facebook
  • X
  • note

前編はこちら

「FDE」という言葉が混乱を招いている? 日立の展開は

博報堂DYホールディングス CAIO 森正弥氏(以下、森):SIの現場はAIによってどう変わってきましたか。

日立製作所 吉田順氏(以下、吉田):さまざまなAI企業と提携しながら各AIモデルをとにかく試しています。一方で、当社が担っているシステムは金融や保険などミッションクリティカルなものが多いため、何かあったときに「AIが作ったものだからわかりません」とはいえません

 前提として、当社では「属人化をやめる」「きっちりレビューをして、人間が理解できる形にする」という2つを重視しています。今は属人化を解消するために、フレームワーク化を継続的に進めているところです。フレームワークに従えば、誰でも同じものが作れる状態を目指しています。

 また、AIのアウトプットを人間が後で把握できるようにレビュー工数を増やしています。レビュー時にもAIがアシストはしてくれますが、「中身を一切見ていません」といったことはまったくないです。すべて把握するようにしています。

 そのため、生産性としては2027年までに全体で30%向上としています。対象としているシステムがミッションクリティカルである以上、慎重に進めている側面もあります。

株式会社日立製作所 DSSセクター Deputy Head of AI CoE 兼 CAXO 吉田順氏
株式会社日立製作所 DSSセクター Deputy Head of AI CoE 兼 CAXO 吉田順氏

森:「ミッションクリティカルである以上は慎重であるべき」という点は、おっしゃるとおりだと思います。あまりイメージがないかもしれませんが、実は当社も一部クライアントの経理システムや業務システムの開発をAI駆動で請け負っており、そこから、日立グループにはAIの慎重な活用に関するノウハウもまたあると推察します。

 当社の開発業務も、AIによって想像以上に生産性が上がっているのですが、人間のレビューをどこまで介入させるかは葛藤があるんです。あえて人間のレビューを挟まないというチャレンジも、1度はしてみたほうがいいのではないかと。しかし、その方法をどう設計するかは難しい。日立グループが対象とする社会インフラのようなシステムは、特にハードルが高いですよね。

吉田:一方で、ミッションクリティカルなシステムだけを作っていればいいのか、という考えもあります。クライアントへより大きな価値を提供していくために、どのような形が考えられるか。たとえば最近は、FDE(Forward Deployed Engineer)として何ができるかをかなり議論しています。直近でも発表を行っていますが、複数のパートナーと連携しながら、当社のFDE力を強化しています。

 ただ、FDEという言葉が世の中でちょっとした混乱を招いているのも事実です。従来の常駐SEと変わらないという人もいれば、まったく異なる価値があると考える人もいる。自社のデータサイエンティストたちをFDEと言い直す企業も現れています。当社では方向性を決めて、その価値を検証している段階です。その中で、FDEの実践にはさまざまなパートナーの力を借りる必要があると感じ始めています。

森:以前、グローバルAI企業のFDEのヘッドに、企業に散在する異種混合データをAIに連携させるアプローチについてどう考えているのか尋ねた際、「それもAIに聞けばいい。うちのFDEならそうする」という答えが返ってきたんです。これがAIネイティブカンパニーかと、衝撃を受けました。つまり、FDEはAIの実装そのものだけでなく、AIとの伴走カルチャーをクライアントに浸透させる役割も担うということでしょうか。

吉田:なるほど。当社の場合は、FDEの展開においてドメイン知識を重視しています。たとえば、銀行や保険にAIを実装する際、当社の経験やITおよびSIの知識を生かして価値を提供できます。また、製造業や鉄道、電力領域でフィジカルAIを展開するには、AIの知識だけではなく、現場知識、機器・設備やロボットの知識、そして全体をインテグレーションしてどう動かすかという知識も求められます。プロジェクトの中でやらなければならないことがあまりにも多い。加えて、AIモデルも世界基盤モデル、大規模言語モデル、ロボット系モデルがありますし、物理的な動きも発生します。では、現場が分かりやすく使えるAIとはどのような形か……。

 ここまで範囲が広いと、さすがに一人だけでは対応できません。そこで、ポッドチームのようにFDEをプロジェクトメンバーとして採用し、かつ当社のドメイン知識を生かせる体制を組めれば、すぐに価値提供ができるのではないかと考えているところです。

次のページ
急速に高まるAIとセキュリティへの危機感

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • note
CxOトーク連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

藤井有生(AIdiver編集部)(フジイ ユウキ)

 1997年、香川県高松市生まれ。上智大学文学部新聞学科を卒業。人材会社でインハウスのPMをしながら映画記事の執筆なども経験し、2022年10月に翔泳社に入社。ウェブマガジン「ECzine」編集部を経て、「AIdiver」編集部へ。日系企業におけるAI活用の最前線、AI×ビジネスのトレンドを追う。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

  • Facebook
  • X
  • note
AIdiver(エーアイダイバー)
https://aidiver.jp/article/detail/590 2026/07/07 08:00

広告を読み込めませんでした

広告を読み込み中...

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング