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現場に必要な納得感 JTCでも組織が動く仕掛けとは
博報堂DYホールディングス CAIO 森正弥氏(以下、森):実際にコールセンターのAI化を進める中で、日本企業に共通する課題などは見えてきましたか。単にAIを導入すればいいという話でもないですよね。
Gen-AX CEO 砂金信一郎氏(以下、砂金):おっしゃるとおりで、本質はAIの導入ではありません。当社はソフトバンク内のコールセンタープロジェクトを含め20ほどのAIプロジェクトに携わっていますが、ほぼすべて伝統的な日本企業です。過去何十年も努力と工夫を積み重ねて作られた、人間向けのベストプラクティスがすでにある。そこにプライドをもっている方もいます。「このタスクはAIでやるから仕事のやり方を変えてほしい」となんの配慮もせずにいうと、現場で事故が起こるのです。
DXでも同じですが、目先の目標KPIではなく、長期的な視点での共通目標を持っておく必要があります。たとえば「3年後に○○%の工数削減を達成しなければ経営層に責任を求められるのではないですか」と。
今支援している三井住友カードさまも、「2028年度までに業務の7割を自動化する」としています。これは経営層の意思決定であり、現場はそのために動かなければならない。そんな共通認識があるため、具体的にどの順番でどうやっていけば可能なのか建設的な議論ができているのです。
現場の推進力になれる人、特に人望がある人や巻き込み力で現場を動かせるリーダーのような人と、その人をサポートする人のペアが成立している企業は物事が進みやすいです。それを経営陣が裏でサポートしていて、何か調整ごとがあれば対応するという体制です。
森:支援側もクライアントを理解して進めていけるかが問われますよね。体制はやはり重要だと思います。お互いにチームを作っていく。実際に支援する側のチームとして、フォーカスしていることはありますか。単にAIを導入するわけではないとなると、AIのスペシャリストだけでは不十分なはずです。
砂金:そのとおりです。AIのテクニカルな面まで理解があるメンバーもいれば、コールセンターのプロフェッショナルもいます。それにはシステムに詳しいだけではなく、オペレーター業務の経験があるメンバーも含まれます。
そしてもう一つ重要なのが共感力です。プロジェクトを進める中で、なかなか落とし所が見つからない場面は必ず出てきます。ロジカルさと共感性の両軸が必要なのです。そのために、コンサルティングファーム出身者もメンバーに採用しています。
森:Gen-AXの組織体制にフォーカスすると、メンバー構成以外に気を付けている点はありますか。おそらく、支援側に限らず組織作りのヒントになるのではないでしょうか。
砂金:AIのスペシャリスト、コールセンターのスペシャリスト、コンサルタントのそれぞれで重視するポイントは異なる。ここは難しい点ですね。たとえば、エンジニアと一言でいっても、コンピューターサイエンスの領域で新しい手段を模索するリサーチャータイプと、どんな課題も腕力で解決するエンジニアリングタイプではアプローチ方法がまったく違う。この二人を同じ組織にするとだいたい喧嘩が起こるんです(笑)。さらにいえば、プロダクトを開発しているエンジニアと現場をわかっているエンジニアもあまり仲が良くない。
しかし、こういう対立がなければ改善は続かないと思います。そのため、あえて多様なタイプのメンバーを集めて、クライアントの中で起こると考えられる対立を先に我々がやってしまうのです。
