AIが相談相手から仕事仲間へ。1年間で何が変わったのか
1年前、南場氏はこう宣言した。約3,000名いる現業部門でAIを徹底活用して人員を半分にし、そこで生まれた人材を新規事業に充てる。そして今回、その成果を数字とともに示した。最も大きな変化を迎えたのは開発エンジニアだ。Claude Opus 4.5(2025年11月リリース)以降、コードを書く作業が大幅に減ったという。
「プロジェクトによっては、人間が5%でAIが95%。すなわち20倍の生産性を手にしたというケースもあります」と南場氏は述べた。変化はエンジニアにとどまらない。AIを前提として業務フローそのものを組み替えることで、法務リーガルチェックは工数90%削減、QAは工数半減、ライブ配信サービス「Pococha」の配信審査コストは60%削減を実現している。

さらに、この1年で「AIエージェントが民主化したことで、相談相手から仕事仲間になった。そんな感じがします」と南場氏は表現。南場氏自身も、DeNAのIT本部がオープンソースのAIエージェント基盤「OpenClaw」を活用し、社員として登録しトレーニングしているAIエージェント「Lemonクン」をSlack経由で毎日使っているため、当事者としての実感だ。
ToDoの管理、リマインド、グループチャットでの自律的なタスク引き受けなど、活用範囲は日々広がる一方、「毎朝、AIエージェントと結構喧嘩してるんですよね」と南場氏は笑いを交えて話した。
効率化で生まれた時間が、新規事業に向かわない理由
一方で、南場氏は課題についても率直に認めた。「新規事業への人材シフトがまだ思ったほど進んでいない」というのが正直なところだという。
原因はシンプルだ。現場は真面目なのだ。「同じタスクをするのに工数が少なくて済むようになると、余った時間でやりたくてもできなかったことを自分でどんどん詰め込んでいく」。「AIのおかげで、今まで時間がなくてできなかったことができるようになりました」と現場は言う。しかしそれは、やらずともなんとか成立していた仕事だ。

誰も自ら「リソースの空きができました」とは言ってこない。この構造を打ち破るには、「ある程度乱暴なリーダーシップが必要だ」と南場氏は言い切った。先に人を動かし、限られたリソースの中で工夫させる。あわせて、マネージャーの評価指標に「人材の輩出」を組み込む方向でも検討が進んでいるという。
また、AIエージェントが普及する中で新たに重要になってきたのが「エンバイロメントエンジニアリング(Environment Engineering)」だ。AIエージェントがどこまで自律的に動いてよいか、どのような行動を許可するか。ガードレールの設計、セキュリティ対策を含む「安全性と利便性を両立させる環境を整えた組織こそが、AIのメリットを最大限享受できる」と南場氏は強調した。
