仕事ができる人とできない人の格差 AIでより顕著に
藤井(AIdiver編集部):おざけんさんは「AI時代は究極の属人化が起こる」と予測されていますよね。
小澤健祐氏(以下、おざけん):属人化というよりも、二極化に近いですね。たとえば、営業であれば売れる人は売れ続けるし、売れない人は取り残される。その格差が広がるということです。
そもそも、業務知識がなければプロンプトは書けません。どの企業にも「この領域といえばあの人」といわれる社員がいるでしょう。そういわれる人ほどAIを使うのが上手く、仕事ができます。一方で、周囲への指示が苦手な人はAIへの指示も苦手。結果的に、その場で足踏みをするだけで終わってしまうのです。つまり、いわゆる「仕事ができる人」だけがプロンプトを自ら書いて働き、さらに仕事ができるようになるわけです。では、その人が辞めたらどうなるか。想像できると思いますが、この状況を私は「生成AI時代の究極の属人化」と呼んでいます。
藤井:優秀な社員が辞めると同時にノウハウも消えてしまう。ノウハウを拾い上げるための仕組み化が必要ですね。
おざけん:わかりやすくいえば「レシピにする」という話です。プロだけでなく他の人が再現できる形にする。それがAIエージェントの活用ということです。
藤井:ここで多くの人が「私は生き残れるのだろうか」と感じるはずです。特定の業務知識をもつ人はもちろんですが、AI時代にどのような人材が求められるのでしょうか。
おざけん:日本は基本的に総合職採用であるため、ジェネラリストが多いです。だからこそのメリットもあります。AIが学習しづらい"調整力"がある人材が育っているのです。業務の中のラストワンマイル、あと一歩をしっかりこなして100%のものを作れる人材が日本には非常に多い。空気を読む、相手との距離を保ちながらプロジェクトを前に進める。それも安定していて完璧な精度で。今のAIには、こうした日本人ならではの調整力をまだ再現できないでしょう。
反対に米国はジョブ型雇用がベースであり、特定業務のスペシャリストが多いです。しかし、ジョブを定義できるということはAIエージェントに取って代わられやすいともいえます。実際、今はハーバード大学でMBAを取得しても約23%の人が就職できない状況が起こっているのです。そう考えると、日本の人材の価値は高まっているのかもしれません。AIが学習できない"会社力"がある。
米国の場合は「就職」ですが、日本は「就社」という側面が強いです。「こういう案件はこのルートで稟議を回したほうが良い」といった会社のスペシャリストが多いのです。私は日本の総合職にAI時代の可能性を見出しています。
藤井:日本はジョブ型雇用に失敗したといわれることもありますが、それが追い風になっているということでしょうか。
おざけん:というよりも、日本はオペレーションが綺麗なのです。海外に目を向けると、ジョブ型雇用でも担当業務を雑にこなしているケースは珍しくありません。ところが日本は、100%を求めるため空いた隙間を誰かが必ず埋めてくれる。実は日本は進みすぎているのではないかと思っています。正直なことをいえば、国によってはまずは街を綺麗にしてからAIロボットを導入したほうが良いと思える場所もありますよね。それと比較すると、日本はインフラが整いすぎている。5Gのカバレッジも世界トップクラスです。ここに、AIをどう掛け合わせるのかが問われています。
