2026年こそ転換点 コンタクトセンターが“最適な実験場”であるワケ
小澤氏は「2022年11月のChatGPT公開よりも、2026年のほうが大きな転機ではないか」と強調する。大学入学共通テスト15科目のうち9科目でChatGPTの最新モデル(当時)が満点を取得したニュースは、すでに多くの読者が知るところだろう。最近では、Anthropicが「Claude Mythos」を発表し、日本のメガバンクが利用権限の取得に動くなど話題を呼んだ。
しかし、このようにテクノロジーの話題が先行する中、小澤氏は「現場との乖離」を指摘する。昨今、世間では特にClaudeが大きな注目を集めているが、Microsoft CopilotやGoogleのGeminiしか全社利用できないケースも多いからだ。その前提も踏まえて、小澤氏は現場の実情に合わせたAI実装を解説した。
今回のメインテーマである「コンタクトセンター」は、人口減少が進む日本の中でも人手不足に悩まされてきた領域だ。テクノロジーを活用した業務の効率化や生産性の向上に力を入れている現場は多い。そのため、小澤氏は「コンタクトセンターはAIと向き合った最初の部署ではないか」と独自の視点を述べる。
「今のようにAIが話題になる前から、チャットボットやコーパスなどを活用してきたはず。つまり、本当の失敗を理解していますし、AIがもてはやされている裏でうまくいかない現実を知っている担当者も多いのではないでしょうか。その経験こそが、AIエージェント時代における最大の武器です。だからこそ、コンタクトセンターからAIエージェントの実装を進めていく必要がある」
しかし、その前に解決すべき課題があるという。たとえば、顧客からは同じ会社に見えていても内部ではコンタクトセンター、営業、マーケティングが別の指標を追っている。それでは顧客体験の最適化は難しい。こうした状況のままAIエージェントを導入しても、部門内のみで動くため、結局は分断を助長してしまうのだ。
「中でもコンタクトセンターは顧客のことを最もよく知っているはずなのに、その重要性が認識されづらい。コスト削減の対象として見られがちです。AIエージェントによって、この壁を壊していけるでしょう」
では、実現に向けて何がハードルとなるのか。これが小澤氏のいう理想と現実のギャップにつながる。Claude Coworkの登場などによってAIエージェントの実用性の現実味が一層増したが、全社的にClaudeを使える企業は限られているのが実際のところだ。「使えるAIでエージェントをどう設計していくか」という視点が求められる。そこで小澤氏は、特に日本の大企業で導入されているMicrosoft環境でのAIエージェント活用のユースケースを紹介した。
Microsoftは、2026年3月9日にAIエージェント「Copilot Cowork」を発表した。現在日本では、一部企業で先行利用が可能となっている。講演内では、そのCopilot Coworkのデモが行われた。たとえば、小澤氏が「以下の文章の要約をOneDriveに保存して、Teamsで○○さんに送ってください」というプロンプトを入力すると、Copilot Coworkが組織図から担当者を特定し、ファイル保存とメッセージ送信を自律的に実行する。部署を横断したタスク処理も可能になる。
このCopilot Coworkがさまざまなツールと連携できるようになると、部門間の分断が解消されるだろう。小澤氏は「組織で使える初めてのAIエージェントといってもいい」と強調。さらに「実装起点はやはりコンタクトセンターだ」と続ける。
「対話データが大量にあり、業務フローが明確で、AIの訓練場として最適です。スクリプトやFAQも比較的整っています。コンタクトセンターでうまく実装できないのであれば、他の部署ではもっと難しい」
AIエージェントの実装によって、体制が大きく変わると考えられる。今まではマーケティングで認知を獲得し、営業が受注し、コンタクトセンターがその後の問い合わせ対応をする流れだった。しかし、すでにAIエージェントは電話をかけられるレベルにまで精度が上がっている。今後は問い合わせ対応に加えて、架電、プレゼン資料の送付などまで対応するようになるだろう。「結果的に、CXハブとして、コンタクトセンターが営業やマーケティング領域を取り込んでいく可能性もある」と小澤氏はいう。
「今までは処理件数やコスト削減額、クレームをいかに減らすかに目が向いていたかもしれません。しかし、コストセンターからプロフィットセンターへ、そして企業成長の司令塔へと進化していけるか。まさに今年が転換期ではないでしょうか」
