急速に高まるAIとセキュリティへの危機感
森:現在、まさにドメイン知識が鍵となる「バーティカルAI」、「フィジカルAI」、そして「AI for サイエンス(科学・研究分野)」がAIの3つの柱だともいわれています。そのうちバーティカルAIとフィジカルAIの2つで、すでに日立グループの新しいフォーメーションが見えているように感じます。
吉田:そうですね。当社のナレッジをどう形式知に変えていくかが重要ですが、そのままクライアントに渡すとナレッジが流出してしまいます。いかに自社でナレッジを保持しながら価値に変えていくか。その意味で、データを言語モデルに学習させるだけでなくナレッジグラフ化するなど、さまざまな形に変えて再利用していく必要があるでしょう。
いくらドメイン知識があるといっても、属人化している限りは活用の幅が広がりません。あえてドメイン知識を人から離してほかの人での使える状態にし、クライアントに提供することで、結果的に新たな売上になるのではないでしょうか。
森:変化が激しい中で、自社の強みを生かした戦い方を模索されているのですね。その中で、特に最近注目されているトピックスはありますか。
吉田:こうした議論をしている間にも、毎日セキュリティの話題が飛び交っています。日本の金融機関は特にそうですが、この数ヵ月でセキュリティの重要性は急速に高まりました。当社でも今年の4月からセキュリティ専門組織「Cyber CoE」を立ち上げ、「AI CoE」と同じフロアの真横に配置したことで、頻繁に議論が行われています。以前は、ガードレールをどうするかといった話が多かったのですが、ここにきてシステムの脆弱性ホールの発見に視点が移ってきました。
森:AIの進化が速すぎて、企業や社会がAIを検証したりAIに対するルールを作ったりしているうちに、新しいAIが生まれてしまう世の中です。進化スピードにまったく追いつけない。サイバーセキュリティも同じですよね。社会が脆弱性に対応しようとするスピードよりも、AIが脆弱性を発見するほうが早い。
吉田:AIの著しい進化を受け、日本政府も各金融機関のトップを集めて対応を協議しましたが、たとえば銀行のミッションクリティカルなシステムが狙われると大惨事です。国をあげて対策を今から評価しなければならない認識が高まっています。
森:以前のAIコミュニティは、どちらかというとセキュリティ分野と距離があったように思えます。セキュリティよりもデータの世界と近かった。一方でセキュリティ分野の方々も、一昔前のAIはまだ使いものにならなかったため、AIと少し距離があったかもしれません。しかし、今はAIとセキュリティは切っても切り離せないものです。CoEの連携も必要ですし、両方に精通した人材をどう育ててくかを考える必要がありますね。
