「変わらないことこそが最大のリスクだ」──みずほフィナンシャルグループでCDTOを務める上ノ山信宏氏はそう言い切る。大規模なAI投資を打ち出し、AIチームはわずか1~2年で19倍に拡大。金融という「安全・安心・安定」を礎とする業界で、どこまで変革を起こせるか。ナインアウト 代表取締役 石野真吾氏が、同氏に経営判断の論理、組織・人材戦略を聞いた。
「遊び続けていても仕方ない」 デジタル活用から経営変革への転換
ナインアウト 石野真吾氏(以下、石野):2026年4月に、役職がCDO(Chief Digital Officer)からCDTO(Chief Digital Transformation Officer)に変わられました。変更の意図や背景を教えていただけますか。
みずほフィナンシャルグループ 上ノ山信宏氏(以下、上ノ山):「トランスフォーメーション」という言葉を入れたかったんです。社内でデジタル技術の活用自体が目的化してしまっており、その先にある変革への意識がまだ薄い。本当は「Chief "Transformation" Officer」でもいいのではないかと思っていたぐらいです。とはいえ、さすがにやり過ぎかと思い直しました(笑)。
石野:過去の取材記事を拝見していると、半年前までは「まだAIを試している段階」というトーンでした。それが直近では「パラダイムシフト」という言葉を使われています。この半年で何が変わったのでしょうか。
上ノ山:まず、おもちゃ遊びを続けていても仕方ないと思ったこと。生成AIが注目され始めた頃は、AIに対してまだ半信半疑な部分もありました。しかし、この半年から1年の目まぐるしい進歩を見ていると「もしかしたらこれはいけるかもしれない」と。AIは指数関数的に伸びていく可能性を秘めています。5年~10年のスパンで考えると、本当にこの会社のオペレーショナルモデルそのものが変わるかもしれません。「確信」とまではいえませんが、そう思えるようになり始めたことが一番大きな変化ですね。
石野:それは上ノ山さん個人としての実感なのですか。それとも組織全体で共有されている考え方でしょうか。
上ノ山:まだ組織全体には広がっていません。一方で、社長を含む経営陣とは方向性を共有できてきています。ただし、全員が共感しているかというと、まだ濃淡はある。それが今の状態です。
金融の基幹業務にどこまでAIは踏み込めるか?
石野:最近はSaaS業界全体の株価が大きく下がるなど、「SaaSの死」が再燃しています。この状況下で、内製化と外部サービス利用のバランスの考え方に変化はありましたか。
上ノ山:AIによって「UIの意味がなくなる」ということは、1年ほど前からいわれていた話です。しかし、これほど早く来るとは思っていませんでした。多くのSaaSはUIで勝負していた世界ですから、強み自体が不要になる可能性がある。
自社においては内製化を優先して取り組みを進めていました。ただし、さまざまなシステムが爆発的に増えていくと、すべてを自前で用意する必要はあまりない。今後はコア部分に特化して内製化を進める方針です。そのために、今はエンジニアを鍛えています。新たに登場するAIツールや技術を適宜取り入れながら、AIか人間か既存のSaaSか、使い分けの最適化を図ろうとしています。これは、1年前に考えていた状況とそこまで変わってはいません。
石野:基幹業務のどこまでAIを組み込もうとされているのですか。
上ノ山:今は着手しやすい部分からAIを取り入れています。金融機関として、100%ミスが許されない正確性を確保すべき領域は必ず残ります。すべてをAIで解決できる世界にはおそらくならないでしょう。
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ナインアウト株式会社 代表取締役 石野真吾(イシノ シンゴ)
ナインアウト株式会社 代表取締役 2013年、Sansan株式会社に入社し、営業・マーケティング領域の仕組みづくりに携わる。その後、Marketo/Adobeにてソリューション開発やSalesTech領域の新製品の国内展開を牽引。2019年よりSmartDrive株式会社にてCEO補佐兼CMO...
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