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オラクルCTO ラリー・エリソン氏「Oracle AI World 2025」で「AI後の世界」語る


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ヘルスケアをはじめとするエコシステム変革

 講演でエリソン氏が力を入れて語ったのが、ヘルスケア分野での取り組みだ。オラクルは電子カルテシステム大手Cernerを2022年に買収し、そのコードベース全体を3年間で再構築する計画を進めてきた。その戦略はさらに広がっているようだ。

 同氏はテスラCEOイーロン・マスク氏の戦略を引き合いに出し、こう指摘した。「電気自動車を成功させるには、車だけでなく充電ネットワークというエコシステム全体を構築する必要があった。同様に、医療を真に効率化するには、病院やクリニックだけでなく、患者、保険会社、規制当局、製薬会社、金融機関といったエコシステム全体を自動化しなければならない」。

 その具体例として、医療プロバイダーと保険会社を結ぶAIエージェントが紹介された。このシステムは、臨床的に最善の治療法と保険制度上の償還可能性を同時に考慮し、医師に選択肢を提示する。特に現金不足に悩む発展途上国のクリニックにとって、医療機関の資金繰りを支援する融資の仕組みは重要な意味を持つ可能性がある。

 オラクルが新たに構築するアプリケーションの大半は、AIが生成するものとなる。エリソン氏によれば、「AIで生成するアプリケーションにはセキュリティホールがない。アプリケーションジェネレーターは物事を忘れたり省いたりしないからだ」。すべてのアプリケーションは「ステートレス」に設計され、データセンターで障害が発生しても別の場所で即座に再起動できる設計になるという。ただし、AI生成コードの品質保証やメンテナンス性については、業界全体でまだ検証段階にあるともいう。

 講演では、バイオメトリクス認証によるパスワードレス社会、メタゲノミクス検査デバイスによるパンデミック早期警告システム、ロボット温室による食料生産の効率化など、幅広い応用例が紹介された。

 エリソン氏は講演の締めくくりで、Microsoft、Amazon、Googleといった大手クラウドプロバイダーは主にAIインフラを提供するが、大規模なエンタープライズアプリケーションの開発には注力していないと指摘。オラクルはAIトレーニング用のインフラと、産業向けのアプリケーションの両方に取り組む戦略を掲げている。エリソン氏は「エコシステム全体の自動化」という、単一企業や単一システムの最適化を超えた、業界横断的な変革の必要性を示した。

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この記事の著者

京部康男(AIdiver編集部)(キョウベヤスオ)

ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineとAIdiverには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail ...

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