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AIエージェントとの120日間~協働から見えた成功と失敗のリアル~

【新連載】全社員がAIに仕事を任せる勇気をもつには 失敗・改善から見えた文化醸成の道筋と具体策

サイバーエージェントグループのAI Shiftが共有する実践知

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AIを使える人と使えない人の差が浮き彫りに 競争心を刺激する「ある施策」とは

 AI活用の浸透に向けて、サイバーエージェントでは、全社員を対象に業務やサービスにおけるAI活用案/新規事業案を自由に提案できる場を設置しました。応募総数はなんと2,000件超。選出されたアイデアからは、営業支援・採用・広告運用に関するものなど50件を超えるAIエージェントが誕生しています。

 予定調整、N1分析、取引先審査の効率化など、現場ニーズに根ざした“使えるユースケース”が多いのが特徴です。実際、実装後はすぐに利用が広がっていきました。

 このような全社的な取り組みが進む一方、各部署におけるAIエージェントの活用率には差が出ている状況です。そこで次の段階として、各部署のAI活用率を競う取り組みを2025年10月から開始しました。自分たちの組織の現在地を知り、さらに上を目指して切磋琢磨してもらう。これにより、全社としてAI活用のレベルを引き上げます。AIエージェントが、一部業務の改善ではなく“成果を上げる武器”として定着した状態を目指します。

 AI活用の差が発生するのは、部署間だけではありません。私は社外でも生成AIリスキリングの講師として、のべ9万人以上の方に学びの機会を提供してきました。社内外の取り組みで見えたのは、AIを使える人と使えない人の差が想像以上に大きいことです。

 AIエージェントを本当に使いこなすために重要なのは、技術以上に考え方と慣れ。スマートフォンのように、意識せず自然に使えるレベルまで浸透させなければ、真の活用には至りません。

 私たちは、社内の「AIソリューションを初めて触る社員」に向けて紹介コンテンツを制作し、浸透させていきました。単なる機能の説明ではなく、「どのように使うと仕事が楽になるのか」「どんな工夫をすれば成果につながるのか」といった細かな使い方まで地道に伝え続けることで、活用の輪が広がっていったのです。

ぶつかった「使われないAIエージェント問題」の壁 どう乗り越えた?

 ここまで紹介した全社施策に加えて、私たちAI Shiftとしては2024年末から「AIエージェント協働推進プロジェクト」を開始しました。社員がAIエージェントを自ら構築し、ともに業務を進める取り組みです。現在は「Stage 3」に到達しています。

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 当初は、定型業務の自動化を狙ったワークフロー型から着手。既存フローを根本から見直し、各チームで次のステップを踏みました。

(1)業務の細分化と「人間にしかできないコア業務」の特定

(2)コア業務以外をすべて自動化するという理想ベースでプロセス再構築

(3)必要なデータ整備とAIの役割を再設計

 たとえばコンサルティングチームでは、従来、資料作成やステータス管理に多くの時間を費やしていました。そこで、上記のステップに沿って業務のやり方を再構築した結果、プロジェクトの開始から2週間で「ステークホルダーとの関係構築」「重要な意思決定」といったコア業務に集中できる体制を整えられました。同時に、必要なAIエージェントの策定も完了しました。

 ただし、すべてが予想どおりに進んだわけではありません。運用を進めるうちに、次のような課題が浮かび上がりました。

(1)市民開発では自動化の範囲が限定的で、結局「使われない」

(2)出力精度が不安定で、「自分でやったほうが早い」という評価になりがち

 いわゆる“使われないAIエージェント問題”です。構築を各社員に任せることの難しさを痛感しました。これに対して、各チームに専任のエージェント構築のプロフェッショナルたち(普段は外部向けに構築を担当しているメンバー)を配置し、専門家主導での構築体制に切り替えたのです。加えて、次の3点をゼロベースでやり直しました。

(1)AIエージェントありきの業務設計(丸投げではなく分担前提)

(2)必要データの整備(最重要ソースから段階的に統合)

(3)日次のフィードバック運用(“使える”レベルまで鍛える)

次のページ
AIエージェント=仲間 技術以上に「文化の醸成」が必要

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この記事の著者

株式会社AI Shift AIエージェント事業部 チーフエバンジェリスト 及川信太郎(オイカワ シンタロウ)

新卒で株式会社サイバーエージェントに入社。AIコールセンター領域でチャットボット・ボイスボットのセールスリーダーを担当後、プロダクト設計およびCS業務を担う沖縄対話センターの責任者を経て、現在はAIエージェントの導入・活用推進をリード。約90,000人への生成AIリスキリングを講師としても提供。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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AIdiver(エーアイダイバー)
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