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AIがもたらす未来と企業の現実解

AIとの共存に必須な“ある力” PKSHAが考える、企業を成長させるリーダーの条件とは

AI時代を生き抜く、“攻めの思考法”

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AIで苦労が消えると中間層も消える? 「経験から得るスキルをどう磨くか」が次の課題に

 佐野氏が一貫して話すように、AI時代には特に社会の変化に対する洞察力や判断力が重要となる。これは、積み上げてきたノウハウや苦労した経験によって磨かれるものだ。AIが多くの業務を担うようになれば、次世代のリーダーが必要なスキルを身につける機会が減る可能性もある。佐野氏は「こうしたスキルをどう身につけるべきかは、重要かつ難しい問い。AI導入の次にぶつかる壁ではないか」と話す。

「最近、AI議事録ツールでも同じことを思いました。議事録をとるのは、物事を構造的に捉える訓練でもあります。しかし、AIにすべてを任せると、その苦労を経験できないという側面もある。結果的に、自分自身の成長に必要なビジネススキルが身につきづらくなります。現場の業務はAIによって効率化されても、永遠に中間層が生まれなくなり、会社の競争力が衰える恐れがある。将来的には中間層の育成すらもサポートするAIが登場するかもしれませんが、今のところは、AIができる作業をあえて新入社員に任せるなど、AIと人手のハイブリッドな使い分けが必要でしょう」

 PKSHA Technologyでは、状況を素早く理解し行動に移せる“ビジネスの運動神経”が良い若手社員たちが、新しい技術を活用しながら自ら成長しているという。ただし「あくまでも、独自の企業文化に加えて、現時点で社員数が数百人程度であるため」と佐野氏は分析する。社員数が数千人、数万人規模の大企業では、必ずしも同じやり方が通用するとは限らない。

「だからこそ、常に企業の体制とやり方をアップデートし続けられる柔軟さ、新しいことに挑戦する姿勢が、これまで以上に重要ではないでしょうか」

 たとえば、AIを「社員の成長を助けるツール」として活用する発想だ。具体的には、判断基準を明確にして学習させれば、AIが新人社員に的確なアドバイスをする仕組みも作れる。答えを出すのではなく、考え方のアドバイスをする。このようなAI活用の柔軟さは、企業が新しい技術にどう向き合うかを考えるきっかけになるだろう。

「就職活動でも、AIツールがどれだけ使えるかが企業を選ぶ基準になりつつあります。つまり、新しいことへの挑戦に臆病な企業は、働く先としても選ばれなくなるということ。昔でいう『PCがない会社、インターネットが使えない会社に入りたくない』のと同じです。実はAIの問題ではなく、企業やその経営層の姿勢の問題という場合もあります」

 AIをどう活用していくかは、技術的な合理性だけでは決まらない。そこには、新しい挑戦を続ける姿勢や、「何かを成し遂げたい」という強い動機が求められる。

 こう考えると、AI時代にはより一層“熱量”といった、人の心を動かす側面が必要になるともいえるだろう。佐野氏は「世の中を変えたいという強い想いを持つ人々が、AIを手段の一つとして活用し、新たなビジネスを生み出していく」と、熱く語る。

「当社でいうと、代表の上野山が1番熱量が高いと思います。だから、AIによって行うべきことの解像度も高い。私自身も、誹謗中傷を検知する、金融詐欺を見抜く、不登校になる可能性がある子を見つけるなど、人間の力だけでは解消できない課題をAIによって解決したい。AI技術により“明るい部分”を増やしたいです」

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この記事の著者

藤井有生(AIdiver編集部)(フジイ ユウキ)

 1997年、香川県高松市生まれ。上智大学文学部新聞学科を卒業。人材会社でインハウスのPMをしながら映画記事の執筆なども経験し、2022年10月に翔泳社に入社。ウェブマガジン「ECzine」編集部を経て、「AIdiver」編集部へ。日系企業におけるAI活用の最前線、AI×ビジネスのトレンドを追う。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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