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AI時代のマーケティング最新動向(AD)

「AIに仕事を奪われる」は思考停止。音部大輔が語る、AIショートカットを用いて独創性を生む思考法

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 トップマーケターは、AIを活用した戦略立案や広告生成ツールをどう捉えるのか? Hakuhodo DY ONEのマーケティング支援サービス「ONE-AIGENT」を軸に、マーケティングの最新動向を追う本連載。今回は特別編として、クー・マーケティング・カンパニー代表の音部大輔氏がゲストに。『AIdiver』のマーケティングを題材に、博報堂DYグループの社内ツールである、デジタルマーケティング戦略立案プラットフォーム「CREATIVE BLOOM PLANNING」と「CREATIVE BLOOM DISPLAY Ads」でできることを紹介し、忌憚ない講評をいただいた。AIが「標準」を提示することで、人間をどうアシストするのか。

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知能とは何か。という視点から最新AIツールと対峙する

柴山:『MarkeZine』に1月に掲載された音部さんのインタビュー(「君は世界をどう「再構築」しているか? 音部大輔氏が2026年のマーケターへ贈る言葉」)には、とても納得しました。人間もAIも世界を再構築している、とした上で、知識や経験を用いる人間に「AIのほうがより偏向の少ない世界を再構築できる可能性が高そう」とおっしゃっていましたね。

音部:そうですね。AIの台頭で、2025年は「知能とは何か」に向き合った1年になりました。人間は固有の知識や経験に基づいて、たとえば将来のビジョンのような未知の世界を描くことができます。

 ですが、知識や経験は人によるので、どうしてもバイアスが生じます。一方、AIには“経験”はありませんが、膨大な情報収集と処理速度によって、バイアスの少ない回答を提案してくれる存在になるのだと考えました。

クー・マーケティング・カンパニー 代表取締役 音部大輔氏日米P&Gで17年間ブランドマネジメントなどに従事した後、ダノンジャパン、ユニリーバ・ジャパン、日産自動車、資生堂などで勤務。マーケティング担当副社長やCMOとしてマーケティング組織を構築・指揮し、複数ブランドの持続的成長を実現。2018年1月より現職。博士(経営学 神戸大学)。日本マーケティング学会 理事。著書に『なぜ「戦略」で差がつくのか。』(宣伝会議)、『マーケティングプロフェッショナルの視点』(日経BP)がある。

クー・マーケティング・カンパニー 代表取締役 音部大輔氏

日米P&Gで17年間ブランドマネジメントなどに従事した後、ダノンジャパン、ユニリーバ・ジャパン、日産自動車、資生堂などで勤務。マーケティング担当副社長やCMOとしてマーケティング組織を構築・指揮し、複数ブランドの持続的成長を実現。2018年1月より現職。博士(経営学 神戸大学)。日本マーケティング学会 理事。著書に『なぜ「戦略」で差がつくのか。』(宣伝会議)、『マーケティングプロフェッショナルの視点』(日経BP)がある。

 今回、見せていただくツールは、AIを活用して戦略プランニングと広告生成を自動で行えるのですよね?

柴山:はい。早速、どのように進めるかをご紹介したいと思います(※1)。プランニングする題材を本記事掲載メディアである『AIdiver』さんとして、まず「CREATIVE BLOOM PLANNING」に情報をインプットしていきます。

 たとえば「基本商材情報」の項目に『AIdiver』のURLを入れれば、自己紹介的な部分に書かれた定義を自動で読み込みます。ほかにも、参照サイトやPDF資料などがあれば、登録できます。同時にリサーチが走って、競合分析や顧客セグメント、初期仮説などが洗い出されます。

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膨大な情報の収集と整理で“スタンダード”を提示

音部:『AIdiver』さんなら、同じ翔泳社で長く運営されている『MarkeZine』との横連携は強みの一つになると思いますが、そうしたことも出てくるのですか?

柴山:そうですね。商材情報としての“強み”か、もしくはSWOT分析の中に出てきます。続いて、顧客セグメント、ペルソナ、そして訴求軸や実際のコピーを提案します。顧客セグメントやペルソナには、月間3.8億超のIDをもとにしている我々のDMP「AudienceOne」や、博報堂生活総合研究所の30年以上にわたる生活者観測データを利用しています。

音部:『AIdiver』さんのペルソナだと、複数の「現場サイド」だけでなく、「マネジメントサイド」も抽出してくれるんですか?

柴山:そうですね。AIが導き出すものは、やはり最大公約数に留まるので、ペルソナも訴求も、ありそうなものを提示します。私たちは「スタンダードを出す」という捉え方をしています。

 続いて「CREATIVE BLOOM DISPLAY Ads」を見ていただけたらと思います。今回はバナー広告で試してみますが、「CREATIVE BLOOM PLANNING」の内容をシステム間連携し、加えてAIdiverのロゴや押久保編集長のお写真を登録すると、先のプランニングをもとに、たくさんのバナー画像を提示します。

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 ……というわけで、一連のデモンストレーションを見ていただきましたが、ここからは音部さんに気づきやアドバイスをいただけたらと思います。まず、ご覧になって率直にいかがでしたか?

音部:とても興味深かったですし、これがHakuhodo DY ONEさんのAIの使い方なのだとよくわかりました。ひとことでいうと、誰がやってもあまり変わらない「標準的な世界認識」をAIに担わせる、という発想なんですね?

柴山:はい、その通りです。さすが、ずばり本質を言い当てられた気がします。

※1「CREATIVE BLOOM PLANNING」、「CREATIVE BLOOM DISPLAY Ads/TEXT Ads」でのデモ詳細は第2回記事第3回記事で詳細解説しております。

富士山の五合目まで、まず車で行く。本質はショートカット先にある

音部:冒頭で触れていただいたMarkeZineの記事で、私は「知能とは、認識の中での世界の再構築」だと述べました。人間が知能を発揮するとき、経験を通じて正解に近い答えを見つける自動処理が働きます。

 この処理を「ヒューリスティックス」と言いますが、その実現には膨大な時間がかかります。当然、3歳児より30歳のほうが、ものの認識やそれをもとにした解の提示を精度高く行えるわけです。

 御社のAIの使い方は、誰がやってもほとんど変わらない“世界認識”を、AIに肩代わりさせるという思想が明確だと思いました。たとえるなら、富士山の五合目までは車で行き、そこから先の差がつく部分を自らの足で歩くようなものでしょうか。

柴山:まさにその通りです。我々も、ツールの出力をそのまま使うことは現場に求めていません。AIは、先ほど申し上げたように、最大公約数に答えが収束しやすい特性があります。我々がこれらのツールで目指しているのは、まずはスタンダードを自動で出すことです。

Hakuhodo DY ONE 常務執行役員 柴山大氏
Hakuhodo DY ONE 常務執行役員 柴山大氏

 その上で、人間が、いい意味での違和感をどう加えていけるか。プランナーやクリエイターがこれまでかけていた時間をショートカットして、素早く高みに押し上げるためのアシストツールという考え方があります。その根底にあるのは、博報堂DYグループの掲げる「AI powered Creativity」の理念です。

音部:下ごしらえを機械に任せ、人間はその標準を超えることに注力する、ということですよね。AIのアウトプットそのものに依存するのではなく、それを博報堂らしいものにするための信念を感じました。

コピーライターAIの弱点。視覚的情報の組み込みの甘さ

音部:標準の抽出において優れた装置である一方、さらなる進化の余地も感じました。たとえば、デモで見せていただいたバナーのバリエーションにおいて、視覚情報の同一性はあまり担保されていないようでしたね。色や配置、人物の表情や姿勢など、人間の生理的な仕組みに訴える部分は、ブランドの進化の方向性として強化できるポイントでしょう。

 データ基盤である「AudienceOne」との連携についても、現状はそのポテンシャルの数パーセント程度に留まっている印象を受けました。予定されていると思いますが、今後さらに連携が深まると、「なぜこの10本のクリエイティブが必要なのか」という意義を、より深い人間理解に基づいて抽出できるようになると思います。そうすると、さらに強力になりますね。

柴山:おっしゃる通りです。現状はまだ、バリエーションを大量に出した中から「選ぶのは人間」という段階にあります。どのファネルで、どの生活者にどのクリエイティブが最適なのかは、まさに五合目から人間が歩むパートですね。活用できるデータを最大限に生かし、選別の精度を高めていくことは、今後の大きな課題です。

音部:構造的に見ると、これはLLM(大規模言語モデル)ベースなのですよね?

柴山:はい、今日ご覧いただいたツールはそうなります。

音部:すると、言葉に依存しているわけですね。その点で、「コピーライターのAI」という印象を受けました。インプットした情報や、AIが整理・分析した内容から、コピーや訴求軸が抽出されていると思いますが、アートディレクター的な視覚情報の部分にまでは反映されきっていないように見えました。言うならば、ラジオCMに基づくテレビCMのような感じでしょうか。

 いずれは、競合のビジュアルやカテゴリーのデフォルトを踏まえた上での表現の選択なども、AIがサポートできるようになっていくのでしょうね。

AIの得意技は大量生産。一方で場当たり的な判断は命取りに

柴山:ご指摘の通り、現状は言語情報に基づくプランニングに大きく偏っていて、アートディレクションへの連動性は発展途上です。極論を言えばプランニング工程を省略し、LPを読み込ませるだけで、数分でバナーを自動生成することも可能にはなっています。

 ロゴとキービジュアルを入れれば、コピーまで含めて一瞬で形になる。裏を返すと、現段階ではそれくらいの粗さを許容しながら、時間を短縮して数を出すことにフォーカスしている状況です。

音部:なるほど。となると、広告会社の側はもちろん、広告主側もクリエイティブを見極めるスキルが今まで以上に問われますね。かつては渾身の数案から選んでいたものが、AIによって「大量の選択肢から選ぶ」形式に変わるわけですから。

 ただ、数多くの選択肢からの意思決定が「数年後のビジネスの優位性につながっているのか」という問いは、常に持っておく必要があると思います。

柴山:そうですね。場当たり的な判断にならないように注意しないといけないと、我々も考えています。

音部:ダイレクトレスポンスのようなテンポの速いビジネスでは、生成の労力がかからない分、これらのツールの適応性は非常に高いと思います。一方で、長期的なブランディングを重視する領域では、このAIが提示する「数」の中に、いかにブランドの管理基準や戦略的な一貫性を組み込めるかが鍵になりそうですね。

標準を知るから、標準を超えた案をつかめる。いい違和感へつなげる

柴山:いただいた示唆を、これからの改善に必ず生かしたいです。最後に、AIが仕事仲間になるこれからの時代、マーケターには何が問われるのかをうかがえますか?

音部:人間が知能を発揮するには経験が必要ですが、AIの特徴は、自分自身の経験を持たずにバイアスのないスタンダードを提示することです。私たちは「普通」や「標準」を認識しているつもりで、実はそれらは正確に捉えるのが難しかったりします。

 しかし、このツールは「大量のデータに基づいた普通」を可視化することに成功しています。これをベンチマークにすることで、マーケターは自分自身の思考のクセや、世界の認識の仕方をあぶり出すことができるのだなと思いました。

柴山:AIの答えを参照しながら、自分の思考を追求するということですね。

音部:その通りです。AIのアウトプットに対して、自分がどこに不満や“いい違和感”を持つのかを言語化することで、自分が尖らせるべき方向性が明確になります。標準という出発点と、自分の立ち位置の2点が決まれば、進むべき3点目の方向は見えやすくなります。

 標準を超えようと思うなら、まずは「標準は何か」を正しく知る必要がありますね。傷つくことのないAIに、大量のデータに基づいた「標準的な正解」の描写を託す。これこそが、Hakuhodo DY ONEさんのAI活用の妙であり、クリエイターが真に独創的な仕事に向き合うための近道なのだと腑に落ちました。

柴山:ありがとうございます、非常に励みになりました。「ONE-AIGENT」のサービスにさらに磨きをかけ、五合目から先を共に歩む広告主のパートナーでありたいと思います。

ONE-AIGENTに関するお問い合わせはこちらから

本サービスに関するご不明点やご相談はHakuhodo DY ONEのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

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提供:株式会社Hakuhodo DY ONE

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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AIdiver(エーアイダイバー)
https://aidiver.jp/article/detail/437 2026/03/25 10:00

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