AIエージェント導入の目的は、営業においても「業務効率化」では終わらない。サイバーエージェントグループのAI Shiftでは、営業活動そのものをAI前提で再設計し、“売れる営業組織”を構造から生み出そうとしている。PM・マーケティング・営業など、実際の現場で起きた試行錯誤を通じて、AIエージェントと人が協働するまでの120日間を追う本連載。最終回となる第6回は、これまでの取り組みを踏まえ、営業組織全体に起き始めている変化についてお伝えする。
ありがちなプロセスの断絶 AIを軸にすべてを接続する
前回は、商談中におけるAIエージェントとの協働についてお伝えしました。当社では、ヒアリングの補完やキーワード検知といった機能を通じて、営業の判断を支え、受注率の向上を目指す取り組みを進めてきました。
そして現在、その影響は商談という単一のプロセスにとどまらず、営業組織全体へと広がり始めています。商談前、商談中、そして商談後。これらが個別に最適化されるのではなく、一連のプロセスとして接続され始めたことで、営業活動そのものの捉え方が変わりつつあるのです。この変化が営業組織にどのような影響を与えているのか。現場で起きている事実を共有します。前回までの具体的なステップと併せて、ぜひ参考にしていただきたいです。
これまで営業活動は、
- 商談前の準備
- 商談中の対応
- 商談後のフォロー
といった形で、それぞれの業務を分断して捉えられることが多くありました。しかし、AIエージェントを導入することで、これらのプロセスがデータとして接続されるようになります。
たとえば、
- 事前に整理された情報をそのまま商談中に活用できる
- 商談中の発言や兆候が、商談後のアクションに反映される
- 商談後の結果が、次回の商談準備にフィードバックされる
といった具合です。この変化は単なる効率化ではなく、営業活動全体の精度を高める基盤となり始めています。
意思決定は「感覚」から「データ起点」へ
営業組織において、特に影響が大きいのが意思決定の在り方です。これまでの営業活動では、担当者の経験ベースで判断が行われることが少なくありませんでした。しかし現在は、正確なヒアリングの取得状況やリスク兆候の有無といったデータに基づき、判断の起点が変わろうとしています。
具体的には、
- どの段階で案件化しているのか
- 失注の兆候はどこで現れているのか
- どのような対応が受注に寄与しているのか
といったことが、構造的に捉えられるようになりました。これは、営業が「経験に依存する仕事」から、再現性を持って改善できる仕事へと変わり始めていることを意味します。
マネジメントは「後追い」から「介入型」へ
こうした中で、マネジメントの役割も大きく変わっています。従来は、受注/失注が決まってから原因を分析するといった“後追い型”のマネジメントが中心でした。それが、商談中の会話データやキーワード検知によって、商談の進行状況や兆候がリアルタイムに可視化されるようになっています。結果的に、次のような点で大きな変化が得られました。
- リスク兆候が出た案件に対して、早期にレビューや同席対応を行う
- ポジティブな兆候が得られた商談を優先的に深掘りし、勝ちパターンとして整理する
- 兆候ベースで案件の優先順位を見直し、リソース配分を最適化する
プロセスの途中に入り込むマネジメントが可能になったのです。これまで、マネージャー達は「どの案件を見るべきか」という判断自体に多くの時間を割いてきました。それに対して、今は兆候データをもとに案件の優先度が明確になるため、具体的な改善施策そのものに時間を使えています。「どの案件にどう介入すべきか」が構造的にわかるからです。結果として、マネージャーは受注/失注の報告を受ける存在から、成果を左右するプロセスに直接関与する存在へと進化しました。
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- この記事の著者
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株式会社AI Shift AIエージェント事業部 チーフエバンジェリスト 及川信太郎(オイカワ シンタロウ)
新卒で株式会社サイバーエージェントに入社。AIコールセンター領域でチャットボット・ボイスボットのセールスリーダーを担当後、プロダクト設計およびCS業務を担う沖縄対話センターの責任者を経て、現在はAIエージェントの導入・活用推進をリード。約90,000人への生成AIリスキリングを講師としても提供。Xはこちら(https://x.com/cyber_oikawa)
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