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The AIdivers:変革者たち

SaaSはただのデータベースになる──「Deadはあり得ない」の勘違いと生き残りの条件

TOKIUMはSaaS産業の構造からどう脱却したのか

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勘違いしがちなSaaSとAIの主従関係 「AI機能を追加」では足りない理由

──世間的には、Claude Codeなどを使えばある程度の内製化が可能ともいわれていますよね。非エンジニアも含めて開発のハードルが下がったといわれていますが、どこまで現実的かは疑問です。

黒﨑:たとえば年間1000万円のライセンス料を支払っているようなCRMの機能を、100万円以内で作ること自体はできると思います。しかし「そもそもそのソフトウェアが本当に必要なのか」という議論になるのではないでしょうか。

 ユーザーはソフトウェアを使いたいのではなく、受注数や問い合わせ数を増やして売上を上げたいわけです。そのためのダッシュボードや履歴を確認する画面そのものは不要になる可能性が高いと思っています。リードから受注までのオペレーションを見せずに、成果だけを届ける仕組みのニーズが高まるでしょう。いいかえると「内製化はできるが、その工数すらももったいないから丸ごと全体の業務をやってくれる企業に任せる」ということです。そこまで任せてもらえる企業の需要が高まると思いますし、当社としてもそのポジションを取りにいきたい。

 ちなみに、当社ではオフィスの受付管理のSaaSを月5万円で契約していたのですが、半日程度で内製化できました。そのほかの簡易的なツールも、新入社員が趣味で作れてしまった。そう考えると、月3万円以上払っているSaaSをAIでリプレイスして運用する分には、経済合理性はあるのではないでしょうか。

──SaaSへのAI機能の実装はすでに各社が進めていますが、それだけでは不十分なのでしょうか。

黒﨑:主従関係がそもそも逆なんです。SaaS企業の多くは、SaaSが主でAI機能は従属するという設計思想でいる。しかし現実は逆で、ClaudeやChatGPTが主であり、SaaSはそこに従属するツールです。たとえば、ユーザーがClaudeに「経費精算をやっておいて」と指示すると、Claudeが該当のSaaSの画面にアクセスするとします。その画面にAI用の入力ボタンがついていたところで、裏側で動いているのは結局ClaudeやChatGPTです。ボタンを押さなくてもそのまま処理できるのであれば、ボタンの存在意義がありません。無理にSaaSがある必要がない、ということです。

 極論をいえば、SaaSはデータベースで良いのです。よく「AIエージェントが読みやすいUIに進化する」という議論もなされますが、AIエージェントはそもそもUIを見ない。APIで通信できるプロトコルがあれば業務ができます。

──一方で、重要な業務フローに組み込まれているSaaSだと、そう簡単には淘汰されないような気もします。

黒﨑:正直すぐに解約されるといったセンセーショナルな話ではないでしょう。ただし、構造的な話をすると、ライセンスの圧縮は確実に起きます。300人、500人の担当者全員にシートを割り当てているCRMやSFA(営業支援システム)が、年間数千万円規模のコストになっている企業も多いです。そこに商談記録や営業日報をAIエージェントが自動で入力・同期するようになれば、AIエージェントに発行するAPIキーが1本あればすみます。結果、300シートが1シートになる可能性があるのです。

 さらに、ここでも既存のSaaS内にだけAI機能を追加するアプローチには限界があるという話になります。たとえば営業業務は、CRMへのデータ入力だけでなく、顧客へメールを送り、Excelを開き、PowerPointで資料を作るなど、複数のシステムをまたがなければなりません。この「またぐ」部分をAIエージェントが担うほうが、削減できる人件費は圧倒的に大きい。つまり、特定のSaaSに閉じたAIエージェントを提供している以上、あまり付加価値が生み出せないのが現実です。AI機能も“オープン性”が重要になるでしょう。

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AIが “呼び出したくなる”アセットが強みに これからの競争優位性とは

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この記事の著者

藤井有生(AIdiver編集部)(フジイ ユウキ)

 1997年、香川県高松市生まれ。上智大学文学部新聞学科を卒業。人材会社でインハウスのPMをしながら映画記事の執筆なども経験し、2022年10月に翔泳社に入社。ウェブマガジン「ECzine」編集部を経て、「AIdiver」編集部へ。日系企業におけるAI活用の最前線、AI×ビジネスのトレンドを追う。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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AIdiver(エーアイダイバー)
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