AIが “呼び出したくなる”アセットが強みに これからの競争優位性とは
──では、どのようなビジネスであれば生き残れるのでしょうか。TOKIUMはAIエージェントの「ベンダーフリー化」を宣言されていますよね。
黒﨑:システムを入れ替えなくても、その上で操作しているユーザーの作業を丸ごと任せられるのが、AIエージェントが提供できる価値の一つだと思っています。たとえば、仮に他社ベンダーのシステムがすでに導入されていても、そのシステムの操作さえもAIで代行するといった体験が提供できるのではないでしょうか。既存のSaaSでビジネスを回すことに固執すると、自社のSaaSとセットでなければ当社のAIエージェントが使えないという制約を作ってしまう。システムではなく、今かかっている人件費の部分をAIエージェントで請け負うイメージです。
──AIエージェント単体で提供するわけではない。
黒﨑:もちろん、各業務に特化したAIエージェントはあります。一方で、それぞれのAIエージェントを束ねる“マネージャーAI”のような存在も必要です。そのオーケストレーションをする設計思想が重要だと思いますし、当社の強みだとも考えています。
──今後は各社がその方向に向かっていくように思えます。結果的に、これまで以上に競争が激化するのではないでしょうか。今はAIエージェントも乱立している時代ですし。
黒﨑:当然、各社もその立場を狙ってくると思いますし、一斉に競争が始まるので営業力やプロダクト力で戦う必要はあるでしょう。一方で、AIエージェントから呼び出したいと思われる独自のアセットをどれだけ持っているかが勝負に分かれ目になるはずです。
たとえば、当社は機密文書を処理できるスキャンセンターを自社で運用していますが、これは1日で立ち上げられるものではありません。継続的な品質管理と専門オペレーターの育成が必要です。当社が保有している8,000人規模のクラウドワーカーのプールも、構築に何年もかかる。現地に移動できるフィールドワーカーの派遣網も同様です。これらは、ソフトウェアだけでは代替できない参入障壁になります。
もちろん、アセットがあれば良いわけではありません。ユーザーが求めているのは、ソフトウェアではなく処理が完了すること。結果的に時間やリソースが生まれること。その成果を届ける手段としてアセットが武器になるのです。例に挙げたような物理・人的アセットを多くもっておく。そうすると、それらを使いながら業務全体をオーケストレーションできるようになります。当社では、その設計部分を強化していきます。

