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フィジカルAIは日本の製造業の再生のきっかけとなるか? ──アクセンチュアが描く「フィジカルAIオーケストレーター」の可能性

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 アクセンチュアは2025年12月、NVIDIAと連携し、日本市場向けに「フィジカルAIオーケストレーター」を発表。「AI Refinery」と「Omniverse」などを統合し、複数のAIエージェントがロボットや設備を連携制御できる仕組みを開発した。 本稿では、このソリューションの技術的背景と実装上の課題について、アクセンチュア 執行役員でインダストリーX本部の統括本部長 金森崇宏氏および同本部マネジング・ディレクターでアクセンチュア・イノベーション・ハブ東京共同統括を務める廣澤篤氏へのインタビューを通じて掘り下げる。

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エージェント型AIからフィジカルAIへ──AIアーキテクチャの進化

アクセンチュア株式会社 執行役員 インダストリーX本部 統括本部長金森 崇宏氏/インダストリーX本部 マネジング・ディレクター 廣澤 篤氏
アクセンチュア株式会社 執行役員 インダストリーX本部 統括本部長 金森崇宏氏/インダストリーX本部 マネジング・ディレクター 兼 アクセンチュア・イノベーション・ハブ東京共同統括 廣澤篤氏

──フィジカルAIオーケストレーターのアーキテクチャについて、解説いただけますか。

金森:まず前提として、フィジカルAIを理解するには「エージェント型AI」の文脈を押さえる必要があります。

 RPAブームの頃は、反復的な処理を自動化する「ハンズフリー」がゴールでした。従来のAIは、人間が「〇〇を分析して」「〇〇を生成して」と明示的に指示を与えるものでした。しかしエージェント型AIは、目的を与えれば自律的に判断し、行動する。ChatGPTに自然言語で困りごとを伝えると、解決策を導き出してくれる、それが自律的に行われるイメージです。

 ただし、「何でもできる万能AI」を単体で作ろうとすると破綻します。たとえば効率化と安全性、スピードと品質というトレードオフは、製造現場では常に存在します。そこで現在主流になっているのが、特定の目的や専門知識に特化した複数のAIエージェントを用意し、それらを統括する「オーケストレーター」を置くアプローチです。

 フィジカルAIオーケストレーターは、この「マルチエージェント協調」をロボットや設備といった物理デバイスに拡張したものです。デジタル空間だけで完結していたエージェントが、現実のアクチュエータを動かす。それがフィジカルAIの核心です。

──NVIDIAのプラットフォームとの連携について、教えてください。

廣澤:NVIDIAから提供される主要コンポーネントは3つあります。

 まず「Omniverse(オムニバース)」。これはデジタルツインのプラットフォームで、USDフォーマット(Universal Scene Description)を採用しています。USDはピクサーがレンダリングパイプライン用に開発したもので、NVIDIAも策定に参加しています。従来のポリゴンベースのシミュレータとは次元が違う、フォトリアルな描画と物理シミュレーションが可能です。

 次に「Metropolis(メトロポリス)」。コンピュータビジョン向けのAIアプリケーションライブラリ集のようなものです。ロボットや産業設備に搭載されたRGBカメラやLiDARから取得したデータを解析し、物体検出、姿勢推定、セマンティックセグメンテーションなどを行います。OpenCVなどを活用して独自にモデルを組むよりも、圧倒的に開発工数が削減され、精度も高まります。

 そして「Mega Blueprint(メガ・ブループリント)」。Omniverse上でフィジカルAIとロボットを開発するためのSDKのようなもので、シミュレーション・ラーニングから物理世界のロボットを稼働させるまでに必要なライブラリ、AIモデル、マイクロサービスなどがパッケージ化されています。

 重要なのは、NVIDIAが提供する技術を活かすには、実際のビジネスロジックの設計や、既存設備やロボットとの接続・統合が不可欠だという点です。これらを包括的に組み合わせ、現場で動くソリューションとして実装するのは、アクセンチュアのようにビジネスとIT、業界の知見を持つシステムインテグレーターの役割です。

システムインテグレーションの実相──OT/IT融合の最前線

フィジカルAIによる活用の変化(作成:アクセンチュア) [画像クリックで拡大]

──日本の製造現場へのインテグレーションでは、どのような技術的課題がありますか。

廣澤:NVIDIAの資料では、ハードウェア層の上にMetropolis、その上にデベロッパー層やシステムインテグレーター層が積まれる形で描かれています。しかし実際には、この「上の層」が極めて複雑かつ大変な領域なのです。

 製造現場には、異なるメーカーのロボットや設備が混在しています。それぞれAPIやプロトコルが異なり、AIとの繋ぎ込み方も微妙に違う。これを統合して一つのシステムとして動かすには、各社の制御仕様を熟知した上で、インテグレーションする必要があります。

金森:従来、日本の製造現場ではこうした異種設備の連携を「人力」で解決してきました。典型例がかんばん方式です。物理的なカードを目視で確認し、人間が判断して次工程に流す。ITシステムを介さずとも、現場の習熟と規律で回っていた。

 しかしフィジカルAIの世界では、かんばんに相当する情報はデータとして扱われ、AIエージェントからロボットへ直接通信されます。そうなると、インテグレーションの仕事は圧倒的にIT側に広がります。OT(制御技術)に精通した人材と、IT系のAI/MLエンジニアが協働しなければ成り立たない。両方を自前で持つ企業は少なく、ここにアクセンチュアの強みがあります。

──それを実現するシステムインテグレーション体制はどうなっていますか。

廣澤:少数精鋭の先端開発チームは日本にいますが、量産フェーズのデリバリーはインドやルーマニアのグローバル拠点と連携しています。

 インダストリーXでは日本のエンジニアに加え、インド出身のロボティクスエンジニアも複数在籍しており、日本の現場要件に対応しつつ、グローバルで協力してクライアントを支援する体制を整備しています。

 また、NVIDIAとは、長年の協業を基盤に、2024年両社で新たにビジネスグループを立ち上げるなど、パートナーシップをさらに拡大しています。NVIDIA自身がAI Refineryを活用するユーザーでもあり、技術面での高度な連携をともに推進しています。

 NVIDIAのジェンスン・ファンCEOとアクセンチュアのジュリー・スウィートCEOは、米CNBCのテレビ番組に同時出演し、両社のAI分野におけるグローバルな協業について語りました。

 ちなみに、日本でも、アクセンチュア・イノベーション・ハブ東京の前身のデジタル・ハブと同じビルにNVIDIAが入居していました。そして、デジタル・ハブだった所が今はNVIDIAのオフィスになっています。このようなご縁が、グローバルな戦略的パートナーシップへと発展したように感じられ感慨深いです。10年以上の蓄積がベースにあるのです。

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デジタルツイン構築の障壁──データ不在と物理的制約という二重苦

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この記事の著者

京部康男(AIdiver編集部)(キョウベヤスオ)

ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineとAIdiverには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail ...

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