SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

AIがもたらす未来と企業の現実解

「AI変革の要諦は技術ではなく文化」富士通・福田譲が語る当事者の実践論


  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note

ITシステムの価値の源泉は「機能」から「データ」へ

──福田さんはSAPの時代からIT変革の最前線に立ち、富士通ではDXを主導する立場でもありました。IT変革、DX、AXは地続きの流れかと感じておりますが、AIがもたらすビジネスへの可能性について、どのように捉えていますか?

福田:二つあります。一つはITを別次元に昇華させ、圧倒的な価値に変える可能性を秘めていることです。1970年代から2000年頃までをIT化の第1期とすると、ITシステムは「省力化」という圧倒的に分かりやすい価値を生みました。

 わかりやすい例でいうと、100人でやっていた経理業務が、ITシステム導入により10人でできるようになったなどですね。こうした省力化の潮流は、特に工場やサービスの現場で顕著で、工場のラインに人がたくさんいたのが、機械化とIT化によって少ない人数で生産ラインを回せるようになった、などはイメージしやすいと思います。

 2000年代以降のIT化を第2期とすると、人手からITシステムに置き換える流れは、もうひと段落して、ITシステムをITシステムで置き換える流れとなり、第1期の省人化から、個別最適による品質の向上やシステム間連携によるさらなる省力化が進みました。

 AI時代の変革は、この工場やサービスの現場で起こった省人化・省力化が、いよいよホワイトカラーの業務のいたるところで起こることだと思います。例えば会議のスケジュール調整や経費精算、データの集計・簡易な分析やレポート作成といった「庶務」は、あっという間にAIが担うようになるのではないでしょうか。個々の業務だけでなく、経営の意思決定といった高度な領域にまで、AIは広範囲に影響を及ぼすでしょう。

──工場やサービス現場で起こっていたことがオフィスの中で起こるということですね。もう一つはどのような点でしょうか。

福田:ITシステムの価値の源泉が「機能」から「データ」に変わるという点です。これまでのITシステムは「この機能が実装できますか?」という機能が中心の考え方でした。その結果、個々の業務のやり方へのこだわりから、工場や部門ごと、国ごとにバラバラのシステムが乱立しがちで、「バラバラデータ」が生成されがちでした。

 一方でAIはデータの品質が命です。質と鮮度の高いデータがなければ質の高いタイムリーなアウトプットにつながりません。AIの品質を向上させるためには、データの品質を上げることが不可欠なのです。つまり、業務プロセスを標準化し、そのままAIが活用できる高品質なデータを生み出すシステムを作るという視点が、AI時代のIT価値創造の源泉となります。

次のページ
トップダウンとボトムアップの両軸でAX推進

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
AIがもたらす未来と企業の現実解連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

押久保 剛(AIdiver編集部)(オシクボ タケシ)

立教大学社会学部社会学科を卒業後、2002年に翔泳社へ入社。広告営業、書籍編集・制作を経て、2006年にスタートの「MarkeZine」立ち上げに参画。2011年4月~2019年3月「MarkeZine」編集長、2019年9月~2023年3月「EnterpriseZine」編集長を務め、2023年4...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
AIdiver(エーアイダイバー)
https://aidiver.jp/article/detail/5 2025/09/25 12:11

広告を読み込めませんでした

広告を読み込み中...

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー