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AIがもたらす未来と企業の現実解

「AI変革の要諦は技術ではなく文化」富士通・福田譲が語る当事者の実践論


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 黎明期からIT変革の最前線に立ち、直近では富士通の全社DXプロジェクト「フジトラ(Fujitsu Transformation)」を主導してきた富士通 執行役員専務 エンタープライズ事業CEOの福田 譲氏。DXの先にある「AX(AIトランスフォーメーション)」をどう捉え、推進するにはどのような壁を乗り越えていくべきと感じているのか。全社DXを推進した当事者である福田氏に、DXからAXへと続く進化のリアリティ、日本企業が目指すべき次なる展望、変革の当事者としての信念などを聞いた。AXを推進するリーダーたちへ伝えたい福田氏の思いとは何か?

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「AI時代のサービス屋へ」富士通の経営改革の軌跡

──御社はグループ会社の再編などをはじめ、この数年経営変革を推進されてきたと思います。直近のAIの進化と今後を見据え「AI時代のサービス屋」へと事業のポートフォリオを大きく変えられようとしていると伺いました。この変革の背景と、福田さんが新しく担われているミッションについて教えてください。

福田:当社は今、成長フォーカスを「サービスソリューション」へとシフトさせています。お客様の業務をIT化するだけでなく、お客様がまだ気づいていない「Why(なぜ)」という潜在的な課題から向き合い、課題の探索や特定、経営や業務改革の青写真作成、それに基づくITの実装、チェンジマネジメントの伴走、そして業務やITの運用までを一気通貫で支援するモデルへ転換中です。この変革に合わせて、当社は組織構造と人材戦略を大きく見直してきました。

富士通 執行役員専務 エンタープライズ事業 CEO 福田 譲氏<br>早稲田大学卒業後、SAPジャパンに入社。ERP導入による業務改革、経営改革、高度情報化の活動に従事。2014年、同社の代表取締役社長に就任。顧客と協働した新たなイノベーション創出に注力し、日本型のデジタル変革に取り組む。2020年、富士通に入社。執行役員常務 CIO 兼 CDXO補佐として、経営基盤の強化を目的とした経営プロジェクト「OneFujitsu」や、富士通自身を変革する全社DXプロジェクト「フジトラ(Fujitsu Transformation)」などを主導する。2023年にCDXO兼CIO。2025年4月から執行役員専務 エンタープライズ事業CEOに就任。
富士通 執行役員専務 エンタープライズ事業 CEO 福田 譲氏
早稲田大学卒業後、1997年にSAPジャパンに入社。ERP導入による業務改革、経営改革、高度情報化に従事。2014年、同社の代表取締役社長に就任。一貫して日本型のデジタル変革の探索と実行に取り組む。2020年、富士通に入社。執行役員常務 CIO 兼 CDXO補佐として、経営基盤の強化を目的とした経営プロジェクト「OneFujitsu」や、富士通自身を変革する全社DXプロジェクト「フジトラ(Fujitsu Transformation)」などを主導する。2023年にCDXO兼CIO。2025年4月から執行役員専務 エンタープライズ事業CEOに就任。

──具体的にどのような組織変革を行ったのでしょうか?

福田:様々な手を打ってきていますが、コンサルティング会社「Ridgelinez(リッジラインズ)」の設立と、特定された課題に対するソリューションを提案する事業モデル「Uvance(ユーバンス)」の立ち上げは象徴的だと思います。RidgelinezはWhyからの伴走、Uvanceは富士通が各業種の主要な顧客と取り組んできたアセットをベースにした、What、Howの提供と言えるでしょう。

 Ridgelinezはお客様の直面する課題を深く理解し、その根本原因を特定することから始める戦略・業務コンサルティングを担います。単なる表面的な問題解決に留まらず、お客様のビジネスモデルやオペレーション、組織構造といった多岐にわたる側面からアプローチし、本質的な変革を支援します。

 そして、特定された課題に対して最適なソリューションを具体的に提案・提供する役割を担うのがUvanceです。Uvanceは当社の持つ最先端技術や多様なサービスを統合し、お客様のビジネスゴール達成に向けた具体的な道筋を示します。例えば、データ経営の強化、業務プロセス改革、業務生産性の向上、デジタルサービス創出に向けたITシステムのモダナイゼーションなど、それぞれの専門家が連携してライフサイクル全体をサポートします。

 プロジェクトのデリバリー体制も大きく変えました。SE(システムエンジニア)の多くをグローバルデリバリーという組織に移しました。これまでの富士通のデリバリーモデルは顧客密着型で、個々のお客様のニーズに個別に最適化して対応してきました。

 しかしDX、そしてAXという変化が激しい時代の中で、最先端の技術トレンドを踏まえた見解や、お客様の業界動向、他社動向のキャッチアップなど、「自社(顧客)のことをよく熟知している」以上のことが求められています。

 そのためプロジェクトのフロントにはお客様やその業界の担当を残しつつ、AI、業界色の強いアプリケーション、セキュリティなど、特定の専門領域に特化した専門家を全社リソース部門に集約・育成し、お客様のニーズに全社最適で応える体制に変えました。

 これにより、各々の専門家をグローバル全体のデリバリーリソースの中から探し出してお客様をサポートできる体制を整えています。この専門性強化とグローバル展開は、お客様が抱える多様な課題に対し、より質の高い、専門的なソリューションを迅速に提供することを目指した動きです。

──従来のSIerの形態とはだいぶ違う印象を受けます。

福田:今までの延長線上で、変わりゆくお客様のニーズに応え続けるのには限界がある、と経営陣全体で議論して進めています。その中で進めているもう一つの戦略が、業種での展開です。大きくわけるとパブリックと呼ばれている金融・公共・社会インフラ系と、プライベート/民需の製造・流通・サービス系で組織を再編し、民需側を「エンタープライズ事業」として、私が担当することになりました。

 準大手や地域の中堅・中小企業を担当させていただいている富士通Japanも含めて、業種軸で運営を一体化させたことで、富士通の歴史上はじめて、超大手のグローバル企業から、地域を含めた中堅・中小企業までも、一気通貫で業種軸で対応する組織になります。

 全社DXであるフジトラ、社内IT改革も次のステージに入るタイミングです。それに合わせて、これまでCDXO(Chief Digital Transformation Officer)、CDPO(Chief Data & Process Officer)、CIOが分担して担っていた役割を新しいCDXOのもとに集約する体制とし、AI時代に合わせたサービスモデルを実現するための組織へと進化させていきます。

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ITシステムの価値の源泉は「機能」から「データ」へ

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この記事の著者

押久保 剛(AIdiver編集部)(オシクボ タケシ)

立教大学社会学部社会学科を卒業後、2002年に翔泳社へ入社。広告営業、書籍編集・制作を経て、2006年にスタートの「MarkeZine」立ち上げに参画。2011年4月~2019年3月「MarkeZine」編集長、2019年9月~2023年3月「EnterpriseZine」編集長を務め、2023年4...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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AIdiver(エーアイダイバー)
https://aidiver.jp/article/detail/5 2025/09/25 12:11

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