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AIがもたらす未来と企業の現実解

「AI変革の要諦は技術ではなく文化」富士通・福田譲が語る当事者の実践論


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トップから現場までが一体となる「全員参加型変革」

──全社DXを推進してきた当事者のご経験から、AXを推進するリーダーはどのような壁に当たると思いますか。

福田:最大の壁は、「自らを変える力」、すなわち「変革への意志」ではないでしょうか。「前例がないから」「リスクがあるから」といった理由で、一歩を踏み出せずにいるリーダーを数多く見てきました。特に日本企業は、何十年も前に自分たち自身が作った古い制度やルール、過去のやり方の呪縛を自らでは断ち切れず、経営や業務・カルチャーを変えられない傾向が強いのかもしれません。これは、経営、事業、ITの各部門が意志を揃えることができず、変革のリーダーシップを発揮できていないことが一因ではないでしょうか。

──その壁を乗り越えるためには、何が必要なのでしょうか?

福田:トップダウンとボトムアップを組み合わせた「全員参加型変革」ではないか、というのが私の仮説です。欧米企業のようにトップが一方的に号令をかけるだけでは、現場は動きませんし、日本特有の現場力を活かせません。

 日本企業の文化では、トップが変革への本気度と方向・道筋を示し、ミドル層がそれを現場に浸透させ、現場の社員が自ら考えて行動する/変わっていく、という経営と現場力を結集させるアプローチが有効なのではないかと。富士通では、自らを変革の当事者として位置づけ、トップが積極的に各部門に出向いて社員と対話をしたり、社内SNSで現場の意見を直接吸い上げたりすることで、全社一体での変革の推進を心がけています。

大切なのはたった二つ。「行動する勇気」と「やり続けること」

──福田さんご自身はどのようなことを心がけてきたのでしょうか。AXをこれから始める企業や担当者に向けて、具体的なアドバイスをお願いします。

福田:まずは「やってみる」ことに尽きます。「自分の会社のAIの取り組みは遅れている」と嘆く方が結構いますが、自ら動けばいいのです。毎月数千円払えば、世界の最先端の生成AIを誰もが使えるわけです。会社の数億円規模の投資を待つ必要はありません。自己投資をして、自分で実践してみること。そして、社内外の感度が高い友人や同僚とつながり、積極的に情報交換をして試せば、誰でもあっという間に「AIパーソン」です。

 フジトラでよく使っている言葉で「あかぱけ」という言葉があります。相乗り、掛け算、パクる、アジャイルやスクラムで使われる振り返り法のKPT(Keep・Problem・Tryの略)の頭文字なのですが、多くの社員がこのマインドを持って、横で繋がり活動してくれています。

──最後に、今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

福田:DXとAXは地続きだと思いますが、その変革は一筋縄ではいきません。人の行動やマインドもすぐにはかわりません。しかし、日本企業には「皆で知恵を出し合い、一体となって変わっていける」という強みがあると信じています。

 富士通自身も、「ニッポン株式会社のIT部門」のような存在であるという自覚を持って、変革の当事者として様々なチャレンジを実践し、その知見をサービスとして社会に還元していくことが使命だと考えています。

 私も役割が変わり、現在はお客様のもとへ毎日足を運んでいますが、CDXO/CIOとして全社DXを推進した経験から、同じ立場のお客様から本音で悩みを打ち明けていただけるケースが増えました。そんなお客様には、いつも「本気でやれば、やってやれないことはない」という自身の信条・言葉をお贈りしています。変化という波に飲み込まれるよりは、自ら波に乗った方が良いのではないかと。勇気をもって飛び込み、やり続ければ、きっと違う景色が見えてくるはずです。

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この記事の著者

押久保 剛(AIdiver編集部)(オシクボ タケシ)

立教大学社会学部社会学科を卒業後、2002年に翔泳社へ入社。広告営業、書籍編集・制作を経て、2006年にスタートの「MarkeZine」立ち上げに参画。2011年4月~2019年3月「MarkeZine」編集長、2019年9月~2023年3月「EnterpriseZine」編集長を務め、2023年4...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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