企業間データ連携の鍵「Zero Data Sharing」という独自構想
押久保:「Zero Data Sharing」とは、どのような仕組みでしょうか。
柴山:AIエージェントを連携するという構想以前から、広告主の1st Partyデータ連携が実現できればより高度なマーケティングの実現が可能となりますが、その壁は高い状況です。たとえば、RAWデータを渡すと「目的外利用もできてしまう」という懸念がでます。一方「Zero Data Sharing」を活用すれば、AIエージェントを介して情報を連携することにより、企業間のRAWデータを直接連結することなく、データの分析結果を利用したマーケティングを実現することができます。
「今日、何を売りたいか」というお題があったとします。「今日売りたい」に対する変数は色々とあり、まず在庫が手元にあるかどうか。そしてオーガニックで売れるものは広告が必要なく、それをブーストできれば売上最大化になるとした場合に、データテーブルを分析しないといけないのですが、私たちがデータテーブルに触るのは難しいのが現実です。
一方で、広告主側にAIエージェントがあれば、「今の条件にあてはまるのはなんですか」と投げかけ結果だけもらえばよいのです。この結果は機密データにはならないので、データ連携のハードルが下がると考えています。まさに「Sharing」はするが、データは渡さないので「Zero Data」という名づけをさせていただきました。
野口:マーケティングの重要情報を、セキュアかつ迅速に連携できるという着想で興味深いですね。
AIエージェントがマーケティングを根本から再定義
押久保:「ONE-AIGENT」の先行提供では、すでに成果が出始めていると伺いました。具体的な効果改善の事例を教えてください。
柴山:AIエージェント型の広告運用およびクリエイティブ作成と、企業間A2Aそれぞれの視点からお話させてください。前者は、AIエージェントで広告運用およびクリエイティブ作成を実現するというわかりやすい話となりますが、数%~二十数%という効果改善に寄与している事例が数多く出ています。AIエージェント型クリエイティブの提供はすでに十分な提供実績があるため、拡販体制を拡大中です。
後者の企業間のA2Aはまだ実証実験の段階ですが、A2Aの成功事例が少しずつ見え始めているので、そう遠くない段階で皆様にご紹介したいと考えております。
押久保:最後に、2026年初頭の本格提供開始を控え、読者にメッセージをお願いします。
柴山:「ONE-AIGENT」は、博報堂DYグループのデジタル広告を支えるHakuhodo DY ONEが、AI時代のデジタル広告領域において、どう新たな価値を創るのかのメッセージを全て詰め込んだものです。デジタル広告の世界は、テクニカルな部分がフィーチャーされてきましたが、そういった部分はAIが担うからこそ、今後は「マーケティングとは何か、ブランドとは何か」という根源的な問いに立ち返ることになると思いますし、ブランドの一貫性やナラティブ設計といった人間ならではのクリエイティビティの重要性が問われてきます。
「ONE-AIGENT」は、私たちがAI時代の未来をどう考えているかという、世の中に対する問いかけです。現時点のものが完成形だとは思っておらずこれからもアップデートしていきます。ぜひ実際に体験してほしいと思いますし、フィードバックもいただきつつ、皆様と共に未来を創っていきたいと考えております。
野口:「ONE-AIGENT」そのものが、1年後に今日聞いた話とは全然違うものになっている可能性を感じます。そのアジャイルな進化を実現するためのバージョン1の土台ができているという認識を持ちました。これからどう変化していくのか、今から楽しみでワクワクします。
押久保:本企画は「AI時代のマーケティング」をメインテーマに多角的な視点から全12回の連載が続いていきます。AI活用が前提になる中で「マーケティングの根本をどう再定義していくのか」を、連載を通して読者の皆様と共に考えていきたいと思います。次回もお楽しみに。
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