社会が一気に変わるわけではない──それでもトヨタとして今やるべきこと
──AI導入やDXに関する重大な意思決定をする際、特に何を意識していますか。
まず、自分自身がしっかり「知ること」です。そして、たとえば当社なら自動運転という技術が、世の中のどの層にどう貢献するのかを冷静に見極めます。私は自動運転を、全ドライバーの8割にとって非常に役に立つ技術だと思います。運転に自信がない、うっかりミスをしてしまう可能性がある方々です。そこでAIによる自動運転が介在すれば、交通事故を劇的に減らせるでしょう。
ところが、残りの2割の方は「私のほうが運転が上手なはず」と思ってしまう。私もそうですが(笑)。運転そのものが好きで楽しみたい方に対しては、当社が展開しているブランドごとの「味」や、自動車の新しい可能性を提供していかなければなりません。当社はブランドメーカーですから。
世の中は徐々に変わっていくものです。だからといって待っていれば良いわけではない。先進的な感覚を持つ方はAIでも自動運転でもどんどん試せば良いと思います。ただし、社会全体が一気に変わるわけではないんです。
だからこそ、未来のモビリティをリアルな環境でテストする場として「Toyota Woven City」が必要でした。世界中にスマートシティはありますが、私はそれを「クルマ軸」で考えたい。自動車が「モデルチェンジ」を繰り返すビジネスだからです。
たとえば当社では5年に1度、必ず新車が出ます。そのタイミングで、当時の最新技術を組み込んで世に送り出すことができる。納期が決まり、価格が決まり、目標が明確になる。自動車をペースメーカーにできます。それがToyota Woven Cityで私たちがやり始めたことです。
