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業界キーパーソンに訊く、AI最前線

AIで金融の殻を破る──三井住友フィナンシャルグループ 磯和氏が語った最後に残る競争力とは

社内の反発を乗り越え、新技術でビジネスを変革する術

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 近年、生成AIは飛躍的な進化を遂げ、企業活動の前提そのものを塗り替えようとしている。そんな中、500億円という大規模なAI投資を進めているのが三井住友フィナンシャルグループだ。個人向け総合金融サービス「Olive(オリーブ)」の土台となった「SMBCダイレクト」や法人向けデジタル総合金融サービス「Trunk(トランク)」の開発など、同社のデジタル戦略をけん引してきた執行役専務 グループCDIO 磯和啓雄氏は今、金融業界におけるAIをどう位置づけているのか。意思決定の背景にある考え方、そして競争力に直結するAI活用の本質をナインアウト 代表取締役 石野真吾氏が聞く。

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かつては“人の数”で戦っていた銀行ビジネス AIでどう変わったか

ナインアウト 石野真吾氏(以下、敬称略):御社は早い段階からAI活用に舵を切ってきました。銀行、そしてグループとして、AIをどう捉えているのでしょうか。

三井住友フィナンシャルグループ 磯和啓雄氏(以下、敬称略):これまでの銀行のビジネスは、どちらかといえば「優秀な人を何人採用するか」という“人の数”で勝負する側面がありました。個の戦闘力の総和で戦っていたわけです。しかし、AIによって個人のノウハウがいきなり共有できてしまう。これは我々のビジネスそのものを大きく変える可能性があることは間違いありません。

 ただし、AIはここ数年で一気に浸透した技術であり、まだまだ荒削りなところがあります。以前ほどではないですがハルシネーションの課題もありますし、今でも「なぜこの答えが出てきたか」を論理的に説明することは難しい。とはいえ、早くAIを取り入れなければ明らかに競争力の差が広がる。そのため、私はとにかく「やりたい人に早くやってもらう」という方法で進めてきました

 2024年10月に設けた500億円のAIへの投資枠は、私が予算のオーナーとなっています。何を優先するのかという議論は後回しにして、やりたい人にどんどんプレゼンしてもらい「おもしろい。やってみよう」を繰り返してきました。結果として、1年で60件ほどのAI関連プロジェクトが生まれています。

株式会社三井住友フィナンシャルグループ 執行役専務 グループCDIO 磯和啓雄氏
株式会社三井住友フィナンシャルグループ 執行役専務 グループCDIO 磯和啓雄氏

石野:多くの企業が意思決定に苦労する中、スピードを最優先にした大胆な取り組みですね。どのような意図があったのでしょうか。

磯和:近しい業務であっても、リテール部門とホールセール部門では異なるパートナーのAIを導入している例もありますが、これは“あえて”です。特定のパートナーに依存することで、意思決定のスピードを下げたり、柔軟性を欠くことは避けたい。いろんな技術が次々と出てくる時期ですから、最初はやりたい人にどんどんやってもらうことを徹底しました。

石野:アグレッシブに投資を進める中で、特に意識されていた点はありますか。

磯和:まずはAIに全員が親しむことです。昨年行った取り組みに「AI-CEO」の開発があります。これは行員から上がってきたアイデアなんです。中島達社長の今までの発言などをすべてAIに学習させて、全員が社長にすぐ相談したり会話したりできる世界を作るとおもしろいんじゃないかと。

 社長に相談できるとなったら、みんな一度は触りますよね。我々も「経営会議で説明したら社長はなんというのだろうか」と試してみたりする。そういうもので良いのです。言い方は悪いですが、行員やグループ会社の社員全員が早くAIに馴染めるように、手当たり次第にやれることはやってきました。それによって、この1年でAIをまったく使わない人はほぼいないレベルにまで浸透しています。すると、おのずと「So what?(次は何をするのか)」というフェーズに入っていくわけです。

次のページ
「So what?」への答えは 生成AIの幻滅期を乗り越えるモードチェンジ

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この記事の著者

ナインアウト株式会社 代表取締役 石野真吾(イシノ シンゴ)

ナインアウト株式会社 代表取締役 2013年、Sansan株式会社に入社し、営業・マーケティング領域の仕組みづくりに携わる。その後、Marketo/Adobeにてソリューション開発やSalesTech領域の新製品の国内展開を牽引。2019年よりSmartDrive株式会社にてCEO補佐兼CMO...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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