多くの企業が「生成AIで効率化された時間」を使えていない なぜ?
近藤:AI時代を生き抜くための成長戦略として、企業の組織はどのように変わっていくべきでしょうか。
及川:これは正解がない問いです。一ついえるのは、従来の企業は「ある正解に何回もたどり着ける」ように最適化されている、ということです。たとえば工場のように、設計図どおりに短期間で高品質なものを大量生産する“絶対の成功”があり、そのためにやるべきことが最適化されているわけです。
しかし、VUCA時代といわれて久しい今、正解がない中で必要とされる能力は従来のそれとはまったく異なります。「人材の定義」そのものを大きく変えなければならない。
多くの企業は失敗から学べずにいます。「こうすれば成功する」という前提のもと、絶対の方程式を理解していない、もしくは実践できなかったこと=失敗だからです。
これからは「正解がない中で正解であろうものを一旦決めて、それが本当に正解かどうかを検証していく」ことを良しとする必要があります。そのためには、社員全員がビジョンに対する強い共感力をもつこと、そして「圧倒的な当事者意識」をもって進められる人材が不可欠です。
近藤:及川さんが企業を支援する際も、まずは人材育成や組織構造といった点にフォーカスしているのですか。
及川:そうですね。プロダクトマネージャーやテックリードがちゃんと育っていない、あるいはジョブ型雇用ができておらず「一人の人がなんでもやる」状況を目の当たりにしたこともあり、今では人材育成の仕事が増えています。
日本の大企業でも生成AIへの取り組みはまだ発展途上です。「うちの業種は関係ない」と、生成AIによる仕事の代替を対岸の火事のように見ている。そんなことは絶対ありません。今から5年後10年後、どの企業の社員も仕事の半分以上が生成AIに代替されるでしょう。
そのとき、ある社員の仕事の半分がなくなっても、本人が残り半分で何かできる能力を開発しない限り「同じ給料で5割の仕事をする」だけです。生成AIが生んだ余白で何をするのか本人も企業も考えなければならない。「こういう人材で今後こういう仕事をやるべきだ」という目的思考をもつのです。
近藤:何を学ぶかも含めてアップデートしていかなければなりませんね。
及川:少し話はずれますが、Microsoftの年次レポート『Work Trend Index』でも言及されているように、人間には「エージェントボスになること」が求められるでしょう。つまり、AIエージェントに対して適切に指示を出し、コンテキストを共有する能力が必要なのです。
AIエージェントは人間よりも高速で物量作戦を仕掛けてきます。私たちはそのスピードに追い付けない。いかにAIエージェントをマネジメントするか。生成AIの出力スピードに対応する新しいプロセスをどう考えるか。生成AIの能力が上がったことで、人間にしかできない難しい課題も生まれています。
