競争激化の生成AIモデル、7社を比較 特に飛躍した3社は……
今年も生成AIモデルを提供する主要企業は、激しい技術競争を繰り広げました。主要7社の動向と戦略を紹介します。
OpenAI:総合力でトップを守れるか
ChatGPTのメジャーアップデートとして、8月にGPT-5、11月にGPT-5.1をリリース。9月には動画生成ツール「Sora2」をリリースし、音声付きショート動画の生成が可能になりました。モデルの総合力(コーディング、数学、マルチモーダル、エージェント機能など)は7社の中でも最高水準で、製品連携の広さも強みです。
Google:既存サービスとの統合で勝負
3月にGemini 2.5をリリースし、11月にはGemini 3へのメジャーアップデートを実施しました。特にGemini 3で性能が飛躍的に向上し、OpenAIに一歩遅れていたところから一気に追いついたといえます。Googleの強みは「検索」「Androidなどのモバイル機器」「Google Workspaceなどのオフィスツール」といった幅広い自社サービス基盤との統合です。これらの機能とGeminiを組み合わせ、より便利なツールとして提供しようとしています。特にマルチモーダル(音声、画像)分野に注力しているようです。
Anthropic:安全性と企業導入に注力
AIコーディング支援ツール「Claude Code」を5月に一般公開しました。また、その後もClaude関連でメジャーアップデートを5月、8月、9月、10月、11月と短期間で実施しています。安全性のポリシーや企業への導入に重点をおき、一般消費者向けよりも法人向けの生成AIモデルとしての戦略をとっています。特にAIコーディングによるソフトウェア開発に力を入れている印象です。
Meta:オープンエコシステム戦略を重視
4月にLlama 4を発表し、マルチモーダル対応と効率重視設計を採用しました。Metaは自社で生成AI製品をビジネス化するよりも、Llama 4をオープンモデルとして一般に提供し、より多くの企業に生成AIを活用してもらう基盤作りに注力しています。一方で、上記3社と比べてアップデート頻度はやや見劣りする傾向にあり、来年以降の動向が注目されます。
ここからは、2025年、私が飛躍的に伸びたと考える3社です。
xAI:リアルタイム連携が強み
Grok 3を2月に、Grok 4を7月に発表。短期間のメジャーアップデートにより推論能力・リアルタイムなデータ連携・マルチモーダル化の性能が向上しました。最大の特徴はX(旧Twitter)との連携です。Xとのリアルタイム連携や検索拡張でSNS・時事情報を解析し、一般消費者間での生成AI活用において存在感を強めました。X上のSNSデータを学習に活用、また生成AIモデルをXに組み込んで提供するといった、SNSと連動しながらモデルを強化する戦略を展開しています。
DeepSeek:低コスト学習で注目を集める
今年1月にDeepSeek-R1をリリースして大きな注目を浴びました。その後も1月から5月にかけてアップデートを継続し、さらに別モデルとしてDeepSeek-V3.1を8月にリリース。直近でもアップデートを加えています。DeepSeekの大きな特徴は、数理・論理・プログラミングの性能の高さ、学習コストを非常に低く抑えられる点です。オープンモデルとして提供しており、今後多くの企業がDeepSeekを採用した製品開発に取り組めるようになっています。
Alibaba Cloud:多言語・マルチモーダルで追い上げ
4月に発表したQwen 3で、多言語対応とマルチモーダル対応を強化しました。多言語やマルチモーダルの性能では米国企業に一歩遅れていましたが、今年は短い頻度でのアップデートを繰り返し、性能を高めています。オープンモデルとクローズドモデルのハイブリッド形式で提供している点も特徴です。オープンモデルとして昨年まで主流だったMetaのLlamaに割って入る形で、Qwenの利用が増加傾向にあります。
昨年までは米国企業が一歩リードしていましたが、今年は中国企業も急成長した年でした。各社の戦略は明確に分かれており、総合力、安全性、既存サービスとの統合、オープンモデル、低コスト化など、それぞれの強みで差別化を図っています。
