新規事業「satto workspace」のコンセプトと開発背景
押久保:まさにその「余白」を体現するサービスとして、現在「satto(サット) workspace」を準備されています。SoftBank World 2025でのプレゼンは衝撃的でしたが、改めてコンセプトを教えてください。
平岡:「サッと終わらせてコーヒーを飲もう(=余白)」という意味を込めています。ヒアリングを重ねた結果、ホワイトカラー、特に大企業の業務で最も負担が大きいのは「資料作成」と「資料探し」だと分かりました。1日の半分をこれに費やしている方も少なくありません。satto workspaceは、ここを劇的に効率化します。
押久保:海外のツールでも生成機能はありますが、satto workspaceの独自性はどこにあるのでしょうか。
平岡:「日本特有の課題」に寄り添っている点です。米国では箇条書きのスライドで合意形成が進みますが、日本ではロゴの位置やフォーマット、前回の定例資料からの滑らかなアップデートが重視されます。理想論を押し付けても現場は動きません。「今の実態」から「AIネイティブな働き方」へ滑らかに適応させるのが、satto workspaceのミッションです。
押久保:痒いところに手が届くアプローチですね。
平岡:はい。0から1を作るより、今ある社内データをリビルドして資料を作るニーズの方が圧倒的に多いんです。ピクセルパーフェクト(1ピクセルの狂いもない正確さ)を求める日本の文化を無視せず、まずはそこにプロダクトを合わせていく。そうでなければ、本当の意味でテクノロジーは民主化されないと考えています。
北風と太陽。AI普及を阻む日本特有の構造的課題と「AI疲れ」
押久保:凄まじい勢いで進化するAIに対して、利用者がキャッチアップしきれない「ギャップ」についてはどうお感じですか?
平岡:僕は「北風と太陽」という言葉で説明しています。米国では「AIを使いこなせないならレイオフ」という圧力(北風)と、生産性を上げれば年収5,000万円も夢ではないという報酬(太陽)が機能しています。しかし日本は解雇規制に守られ、給与も年功序列が基本。「頑張っても仕事が増えるだけ」という状況では、モチベーションが湧かないのは構造的に当たり前なんです。

押久保:だからこそ、人間がAIに歩み寄るのではなく、AIが人間に寄り添う必要があると。
平岡:その通りです。リテラシーに関わらず、自然と恩恵を受けられる状態にすべきです。satto workspaceにキャラクターを持たせ、複雑なプロンプトなしで「可愛いから触ってみよう」と思えるような、斜め上のモチベーションも試しています。
押久保:最近では「AI疲れ」という言葉も聞かれます。AIで仕事が早くなった分、次のタスクがすぐに来て休まる暇がない、という。
平岡:それはリテラシーが高い層でも起きていますね。「バグが直せないから寝よう」という言い訳ができず、夜通し開発できてしまう。余白を作るための道具が、皮肉にも余白を奪っている。これが過渡期の課題です。だからこそ、エンドユーザーが「気楽に」使いこなせる、テクノロジーが人間に降りてくる設計が不可欠なんです。
