AI駆動開発の本質は「コードの効率化」ではない──導入を見据えた次の一手
──最後に、企業のAI活用担当者に向けて、少し進んだAI活用に進むためにはまず何をすれば良いでしょうか?
下田:まず身近で必要なツールを作ってみてはどうでしょうか? Gemini Canvasであれば、非エンジニアの方がアプリのプロトタイプをすぐに作れるようになっています。ToDoアプリやランディングページぐらいなら、本当に簡単にできる。エンジニアの方にもまずプロトタイプを作ってみることを勧めています。頭の中で考えているのと、動くアプリとして目の前に現れた時では、かなり印象が変わるからです。
ただ、これはプロトタイプを簡単に作れるという話にとどまりません。スライドで提案したり、誰かの提案を待ったりしていた時代から、ビジネス側の人間が「どんな動きになるのか」「どういう使い勝手なら自分は嬉しいのか」を動く形で示せるようになった。その解像度を上げてから開発側と会話すると、プロジェクトの進行がまるで違ってきます。つまりAI駆動開発の本質は、ビジネス側と開発側のコミュニケーションの質を変えるところにあるのではないかと思っています。
北瀬:AIが出した成果物は、そのままでは完成品ではないと考えた方が良いでしょう。プロと一緒に磨くプロセスを組織に定着させることが前提です。ただ、そのプロセスが回り始めると景色がだいぶ変わってきます。たとえばマーケティングのダッシュボードもバイブコーディングで短時間に試作できて、「全体で最もパイプライン生成に貢献しているキャンペーンは何か」とAIに聞けば数秒で答えが返ってくる。従来のダッシュボード構築にかかっていた時間と比べると、劇的な変化です。
下田:日本語性能の向上もここに効いてきています。プログラミングはもともと英語に近い世界で、日本人にはどうしても苦手意識がありました。それがAIのサポートによって、普段話している言語でプログラミングができるようになってきた。非エンジニアがCanvasでプロトタイプを作れるのも、この日本語性能の向上があってこそです。
──今日のお話を伺って、個人のAI体験を企業に広げるための道筋が見えてきたように思います。
北瀬:Google Cloudはガードレール──LLM固有の攻撃を防ぐモデルアーマー、データのリージョン制御や権限継承を担うガバナンス層、そして著作権侵害時の補償を規約で明記するインデムニフィケーションなどの防護壁と、エージェント基盤であるGemini Enterpriseを一体で提供しています。企業が検討すべきは個別ツールの導入というよりも、安全にAIを展開するための基盤をどう選ぶかだと思っています。
個人が「Nano Bananaでわかりやすいグラフィックスが作れた」「NotebookLMで資料整理が楽になった」という体験をしている。その体験を業務に持ち込みたいという流れは、もう止められないと思うんですね。であれば、その流れを安全に受け止める基盤を企業として持っているかどうかが問われてくる。AIエージェントの発表イベントやハッカソンなどで積極的に発表されています。「自社で何ができるか」を具体的に探っていただければと思います。
