メモリ・スキル・ドキュメント。AI組織を支える三要素
押久保:AI組織を成り立たせるための仕組みについて、もう少し詳しく教えてください。
野口:ポイントは、単発でエージェントを呼び出してタスクをやらせて解散、ではダメだということです。それだとチームに知識が残っていかない。組織としてAI活動すればするほど知識がたまっていく、つまりメモリがたまっていく設計にすることが重要です。
AI組織を成り立たせる三要素があります。まずメモリ。どんな作業をどんな背景でやって、どんな学びがあったかを、組織全体としても、各エージェントごとにも記録していく。
次にスキル。各職種のエージェントに対して、作業を通じて「これはスキル化できるよね」というものを言語化して、組織のアセットとしてためていく。そしてドキュメント。エージェントたちに適切な情報を渡すために、ファイルシステムを構造化してあげることです。

押久保:ファイルシステムの構造化というのは、RAGとは違うアプローチですか。
野口:私は結構アンチRAG派になってきています。RAGだとレスポンスも遅いですし、多次元空間にわざわざ置いて探させるのは実はすごく難しいタスクなんです。それよりも、明確な命名規則と階層構造で「ここにこのファイルがあるよ」と教えてあげた方が、間違いないし、非常に速い。就業ルールとして教えれば、エージェントが99%間違いなく取りに行きます。
押久保:このファイルシステムは野口さんが設計したのですか。
野口:Claude Codeベースの設計概念を引き継ぎながら、私がアレンジしたものになります。人間が会社の中で何を見てどうやっているかを想定しながら設計しています。CLAUDE.mdというこの組織の「憲法」のようなものがあって、その下に全7体のエージェントに対する共通ルール、さらに各エージェントのディレクトリにメモリ、ログ、スキル、インボックスを配置してます。
データの場所も規則でわかるようにし、パーパスやKGI、ガバナンスルールも入れて、毎回それを読んでからタスクするようにさせています。
OpenClawからClaude Codeへ。750ドル溶かした失敗と大移行
押久保:このAI組織の仕組み、最初からうまくいったわけではないですよね。
野口:まったくです。以前はOpenClawでやっていたんですが、問題が多発しました。最大の問題が、10日間で750ドル(約12万)溶けたということ。非常に非効率で、1リクエストに15万トークン使っていたこともありました。やってきたことのログを全部入れて全部返す、というようなことを平気でやっていて。さらに、「こう運用してね」とルールで伝えたつもりが、まったく守られていなかった。

押久保:できている風だけど、できていなかったと。
野口:そうなんです。それをClaude Codeに引っ越しをしたら、今はものすごく快適な状態です。もともと、OpenClawで考えたメモリ・スキル・ドキュメントの構造が、まったくの絵に描いた餅でした。Claude Codeに移して実現したら、思い通りのAI組織ができるようになった。
押久保:Claude Codeの何が優れているのでしょうか。
野口:まずサブスクで最上位モデルを使えるコストパフォーマンスが圧倒的です。さらに、Claude Code自体がコード開発という「間違えてはいけない作業」の現場で磨かれてきたので、ルールの立て方や手順の再現性が非常に高い。
スキルの管理もメモリの管理もうまい。AI開発の現場で磨かれたClaude Codeの土壌が、私が思い描いたAI組織の実現にかなり近いな状態だったということですね。
野口:決め手になったのは、OpenClawでやっていた時の失敗ログ、約1GBのログを全部Claude Codeに入れたことです。「このAI組織の悪かったところを全部洗い出してくれ」と頼んだら、「あなたの組織設計の思想はこうだと思うけど、これはこうした方がいい」と、コンサルしてブラッシュアップしてくれた。
ファイルシステム自体は私の発案ですが、Claude Codeがちゃんと回るようにリファクタリングしてくれて、今の動くAI組織になりました。
