価値共創を推進する「Serendie」と4つの基盤
これらの背景を踏まえ、DXイノベーションセンターでは、デジタル基盤「Serendie」を構築し、価値共創プログラムを推進している。
「『Serendie』は『Serendipity(偶然の出会い)』と『digital engineering』を組み合わせた造語です。事業を横断してあらゆる領域から集めたデータや、最先端の技術力とプロフェッショナルの創造力を掛け合わせ、お客様やパートナーとともに、アジャイルに、持続的に、新しい価値を生み出すことを目指しています 」(朝日氏)。このコンセプトのもと、三菱電機は4つの基盤を構築した。

技術基盤
一つ目の「技術基盤」は、データを集約・分析するためのデジタルプラットフォーム。これまでの部門ごとのデータやシステムを統合する目的でグローバルで広く使われているシステムを導入した。これにより、電力機器や昇降機、空調機器など、異なる事業領域のデータを横断的に活用し、FA(ファクトリーオートメーション)×電力といった新たなソリューションを創出している。
共創基盤
二つ目の「共創基盤」は、横浜・みなとみらいに開設された共創スペース「Serendie Street Yokohama」を指す。異なる部門や立場の社員、さらには顧客やパートナーが集まり、自由にアイデアを交換できる場所として設計されました。ここには現在、17部門から550名以上の従業員が集結し、のべ7,600人以上の来場者と活発な交流が生まれている。
人財基盤
三つ目の人財基盤は、DXを推進する人材を育成するための仕組み。同社はDXに必要な7つのスキルセットを定義し、DXイノベーションアカデミーを設立。全従業員向けのDXリテラシー講座から、初級、実践、アドバンスの各講座まで、スキルレベルに応じた体系的な教育プログラムを提供。AXにもつなげていく。
プロジェクト推進基盤
そして四つ目がプロジェクト推進基盤だ。Serendie構想の実現のために、アジャイル開発を実現するためのフレームワークであるスクラムをベースとした組織開発と、自律的かつ透明性のあるチーム運営を可能にする。ウォーターフォール開発が主流だった組織文化に、アジャイルの考え方を根づかせる必要がある。この基盤によって、各チームは自律的に開発を進め、迅速に価値を創出することが可能となる。