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AIエージェントとの120日間~協働から見えた成功と失敗のリアル~

【マーケ編】AIエージェントが使えないチームの共通点 導入前に克服すべき3つの壁とは?

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マーケ領域で活躍するAIエージェントとは? 期待できる3つの役割

 土台となるデータ構造やルールを整えた上で、いよいよAIエージェントを本格投入していきます。期待する役割は大きく3つです。

(1)データ入力の自動化

 商談獲得を報告しているSlack投稿にAIエージェント用スタンプを押すと、「Salesforceへ商談情報が自動登録される」「必要な項目(部署分類/ターゲットフラグなど)を自動設定する」という流れを作りました。こうしたフローを増やしていくことで「担当者がどんなに怠けても最低限必要なデータはそろう」状態を作ります。

(2)スコアリングとターゲット判定の自動化

 すでに試験運用している「商談スコアリングエージェント」では、過去データに基づいて「リードが商談としてふさわしいかどうか」「どのサービスにマッチしているか」を点数化する取り組みを進めています。今後はここに「該当のリードがターゲット階層のどこに位置するか」という条件を組み合わせ、商談の重要性を自動的に判断してフラグ立てしていく予定です。

(3)可視化とアラートで“動くべきタイミング”を教える

 「一定スコア以上のリードを自動的にナーチャリングする」「Tableauのダッシュボードで重要ターゲットへの接触状況を可視化する」「特定条件を満たしたらSlackへ通知するAIエージェントを走らせる」といった仕組みを組み合わせることで、どの企業にどんなアクションするべきかAIエージェントが“先に教えてくれる”状態を作ろうと、現在仕組みを整えています。

 これら3つに加えて、さらにもう1つ、マーケティングチームにとって大きな負荷になっているのがクリエイティブチェックの工数です。展示会での壁面デザイン、フライヤー、セミナー資料など、作成するものは多くあります。人が行うと、どうしても行間や余白バランスのズレ、中央ぞろえ・左右ぞろえの不整合、フォントの統一漏れといったミスが発生してしまいますよね。そこで、AIエージェントの力をここでも発揮してもらうことにしました。

 具体的には、過去の記録から「AIエージェントにセルフチェック項目を抽出させる」「IllustratorのAI機能やスクリプトで自動チェックできる部分を洗い出す」などです。これにより「ゼロ次審査エージェント」として、AIエージェントに最低限の標準化を任せることができます。

“人がさぼっても崩れない設計”にまで落とし込む

 この取り組みでわかったのは、AIエージェントはデータとルールが整って初めて本領を発揮するということです。整理されていないデータにAIエージェントを連携しても、的を射た回答は返ってきません。入力ルールが曖昧なままでは、自動化フローもすぐに壊れる。“人がさぼっても崩れない設計”まで落とし込んで初めて、真の自動化が実現するのです。

 いいかえると、この土台を整えることさえできれば、AIエージェントはデータ入力や特定の顧客のデータ統合といった重たい作業から、リード~商談のスコアリング、ターゲット判定、戦略を考えるための前処理・集計といった領域まで、マーケターの頭と手を大きく拡張してくれる存在になるでしょう。

 取り組みに共通しているのは、「人がやるべき仕事」と「AIがやるべき仕事」を意識して分けるスタンスです。どこまでを人の判断として残すのか、どこからをAIに任せるのか。そのために、どんなデータとルールが必要なのか。AIエージェントは魔法ではありません。しかし、正しい前提を整えたチームにとっては、確実に“仲間”になってくれる存在です。

 次回は、マーケティングで創出したリードと商談が、営業側でどう受け取られ、どのように受注へとつながっていくのかにフォーカス。営業プロセスにおけるAIエージェントとの協働について共有します。

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この記事の著者

株式会社AI Shift AIエージェント事業部 チーフエバンジェリスト 及川信太郎(オイカワ シンタロウ)

新卒で株式会社サイバーエージェントに入社。AIコールセンター領域でチャットボット・ボイスボットのセールスリーダーを担当後、プロダクト設計およびCS業務を担う沖縄対話センターの責任者を経て、現在はAIエージェントの導入・活用推進をリード。約90,000人への生成AIリスキリングを講師としても提供。Xはこちら(https://x.com/cyber_oikawa

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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