情報の粒度が属人化 注意すべきAIエージェント活用前の準備とは
どのようにしてAIエージェントが情報を集め、提示する体制を作り上げていったのか。そこにはいくつかの段階と、想像以上に大きな壁がありました。
最初に着手したのは「どの情報を、どの判断のために使っているのか」を明確にすることです。SFAやCRM、社内チャット、議事録などに散在する情報を洗い出し、営業やマネージャーが意思決定する場面ごとに、参照している情報を紐づけていきました。ここで初めて、判断に必要な情報と、実際にはほとんど使われていない情報が混在している状況が見えてきます。
次に取り組んだのが、AIエージェントにどこまで任せ、どこを人が判断するのかという役割分担の整理でした。すべてを自動化するのではなく、情報の収集・要約・整理といった工程に限定してエージェントを介在させる。この線引きは現場と慎重にすり合わせる必要があります。
取り組みの壁となったのは「情報はあるのに使える形になっていない」という問題です。入力の粒度が人によって異なっていたり、重要な判断理由がテキストとして残っていなかったりするため、AIに渡す前のデータ整備が想定以上に難航しました。これに対しては、過去の商談ログや議事録をもとに営業担当者へヒアリングを行い、「なぜその判断をしたのか」がどこにも残っていないケースを地道に確認・補完していく必要がありました。また「AIがまとめた情報をどこまで信頼して良いのか」という心理的なハードルもあり、最初は人の確認を前提とした運用から始めました。
こうした試行錯誤を経て、徐々に「AIエージェントが情報を集めて提示し、人が判断に集中する」という役割分担が現場に根付き始めました。現在、営業担当にとって、AIエージェントは単なる業務効率化ツールではありません。商談前に行っていた情報収集や整理といったプロセスそのものを引き受け、思考を支えるパートナーとして協働する存在です。
商談前には、
- 顧客情報や企業背景の要約
- 過去商談や失注理由の整理
- 他部署・他事業での接点の抽出
- 想定される論点や注意点の提示
- 商談準備メモの自動生成
といった情報が自然と手元にそろいます。これまで営業担当が点在する情報を行き来しながら組み立てていた準備を、AIエージェントが前段で引き受けるイメージです。その結果、営業担当は「何を調べるべきか」を一つひとつ判断する負荷から解放され、商談の場で「何をどう伝えるか」「どこを深掘りすべきか」といった、本来向き合うべき思考に集中できるようになります。
結果として、
- 商談準備にかかる時間が短縮される
- 情報の抜け漏れが減る
- 商談の質が安定する
といった変化が生まれ、商談前の準備が個人の経験や勘に依存する状態から、一定の前提が整った状態へと移行していく。AIエージェントは、そのための土台を支える存在として機能し始めています。
