「意識の灯火を絶やさない」──マスク氏の根本哲学
BlackRockのフィンク氏は冒頭でマスク氏の実績を数字で示した。テスラがIPOして以来、株主リターンは年率換算で43%に達し、BlackRock自身の21%をはるかに上回る。この結果を称賛しつつ、「もし欧州の年金基金がテスラ上場時に投資していれば」と指摘し、成長企業への投資がいかに重要かを強調した。
マスク氏は、自社の事業を貫く哲学から話を始めた。
「私たちが知る限り、宇宙のどこにも生命は見つかっていません。もし意識が私たちだけに存在するのであれば、その灯火を絶やさないためにあらゆることをする必要があります。私の頭にあるイメージは、広大な闇の中で揺らぐ小さなろうそくの炎です。簡単に消えてしまうかもしれない」(マスク氏)
SpaceXの目的は、生命と意識を地球外に拡張することにある。地球で自然災害や人為的災害が起きても意識が継続できるよう、人類を「複数の惑星に住む種」にすることが目標だという。
「エイリアンがいるかと聞かれますが、私自身がエイリアンだと答えています。誰も信じてくれませんが。9,000基の衛星を運用していますが、エイリアンの宇宙船を避けるために軌道を変更したことは一度もありません」(マスク氏)
ロボットが人間の欲求を「飽和」させる時代
対談の中心テーマの一つが、ヒューマノイドロボットによる経済変革である。マスク氏は、ロボットが人間の数を上回る未来を予測した。
「経済生産高は、ロボット1台あたりの平均生産性にロボットの総数を掛けたものです。私の予測では、良好なシナリオにおいて、ロボットとAIがすべての人間のニーズを飽和させる時が来ます。ロボットに何かを頼もうとしても、頼むことが思いつかないほどの豊かさです」(マスク氏)
フィンク氏は、そのような未来における人間の目的について問うた。マスク氏の回答は率直だった。
「完璧なものはありません。しかし、両方を同時に手に入れることはできません。『やらなければならない仕事』と『すべての人への驚くべき豊かさ』を同時に実現することは不可能です。仕事が必要で、一部の人しかできないのであれば、豊かさは一部に限定されます」(マスク氏)
テスラのヒューマノイドロボット「Optimus」は、すでに工場内で単純作業を行っている。マスク氏によれば、2026年末までにより複雑な作業が可能になり、来年末までには一般消費者向けに販売を開始する見込みだという。高齢者の介護、子供の見守り、ペットの世話など、幅広い用途を想定している。
エネルギーのボトルネック──「チップは余り、電力が足りない」
AI普及の最大のボトルネックは何か。マスク氏は明確に「電力」と答えた。
「AIチップの生産は指数関数的に増加していますが、電力供給は年率3〜4%しか増えていません。おそらく今年中に、電力を投入できる以上のチップを生産するようになるでしょう。中国を除いては」(マスク氏)
中国は現在、100ギガワットの原子力発電所を建設中であり、太陽光発電の生産能力は年間1,500ギガワットに達している。年間1,000ギガワット以上を国内に導入しており、バッテリーと組み合わせた定常出力は約250ギガワット──これは米国の平均電力使用量の半分に相当するとマスク氏は説明した。
では、米国全体を太陽光発電で賄うにはどれだけの面積が必要か。
「100マイル×100マイル、つまり約160キロ×160キロの太陽光パネルで、米国全体の電力を賄えます。ユタ州、ネバダ州、ニューメキシコ州のごく一部で十分です。欧州も同様に、スペインやシチリアの比較的人口が少ない地域で全電力を賄えます」(マスク氏)
なぜそれが実現しないのか。マスク氏は、米国の太陽光パネルに対する高い関税障壁を指摘した。中国がほぼすべての太陽光パネルを製造しているため、関税が導入コストを人為的に押し上げているという。
これに対し、SpaceXとテスラは米国内での大規模太陽光パネル製造に着手している。両社合わせて年間100ギガワットの生産能力を目指しており、約3年で達成する見込みだという。
宇宙が「最も低コストなAIデータセンター」になる日
対談のハイライトの一つが、宇宙におけるAIインフラ構想である。マスク氏は、SpaceXが数年以内に「太陽光発電AI衛星」の打ち上げを開始すると発表した。
「宇宙では太陽光パネルの効率が地上の5倍になります。昼夜のサイクルも季節も天候もなく、常に太陽が当たります。また、大気による減衰がないため、同じパネルでも地球上と比べて30%多く電力を得られます」(マスク氏)
冷却面でも宇宙には利点がある。太陽の反対側に向けたラジエーターは、わずか3ケルビン(摂氏マイナス270度)という極低温環境で効率的に放熱できる。
「2〜3年以内に、AIを設置する最も低コストな場所は宇宙になります」(マスク氏)
この構想を支えるのが、SpaceXの「Starship」である。史上最大の飛行機械であるStarshipは、今年中に「完全再使用」を実証する見込みだという。完全再使用が実現すれば、宇宙へのアクセスコストは100分の1に低下する。
「再使用できない航空機を毎回捨てていたら、フライトは非常に高価になります。しかし燃料補給だけで済めば、コストは燃料代だけです。最終的には、航空貨物より安いコストで宇宙に物資を運べるようになります。1ポンドあたり100ドル以下です」(マスク氏)
