使い分けが進む? AI時代における「検索」のリアル
押久保:そうなると、今日の対談のメインテーマですが、いわゆる従来型の検索はなくなるのでしょうか?
杉原:私の意見としては、なくなることはないと思います。ですが、役割は分かれてくる。使い分けが進むでしょう。
従来の検索が強いのは、公式情報や事実関係の確認、特定商品やサイトの情報取得などです。施設の営業時間や料金を知りたい場合、キーワード検索のほうが速く、確実ですね。一方、対話型が強いのは、やはり目的が詰め切れていなかったり、条件が複数あって比較や判断に迷ったりするときだと思います。
「探したいものが決まっているか」それとも「考えながら決めたいか」。ユーザーも、そのように感覚的に使い分け始めているのではないでしょうか。
柴山:納得です。私も、従来の検索はなくならないと考えています。あいまいな問いは、AI検索への移行が進むと思いますが、目的が明確なときは、キーワード検索はやはり便利ですね。
また従来の検索においても、進化であり優れていると思うのは、Googleの「AI Overviews」を含めたユーザーエクスペリエンス設計です。最初は既存のGoogle検索から入り、AI Overviewsが概要を表示する。対話までしなくてもいいけれど、少し大枠を把握したいニーズというのはあるので、それをOverviewsが満たしています。そして、それでも足りなければそのまま検索の画面内でAIモードでの対話に移ればいい。ユーザーにとって非常に合理的な動線設計だと感じます。

20年のAI研究をベースしたフルスタックAIアプローチの強み
押久保:OverviewsとAIモードの構造は、たしかに合理的ですね。一時期はGoogleが劣勢と言われていましたが、Overviewsも含めて巻き返しつつあるという声が増えています。この半年~1年で、どのようなゲームチェンジが起きているのでしょうか?
杉原:少し前はたしかに劣勢の見方もありましたが、やはり20年のAI研究は大きいです。LLMの登場で新興勢力にも機は熟したものの、Googleにすぐに追いつくのは容易ではありません。以前から、私は「言葉を制するものはビジネスを制する」と言ってきましたが、世界最大数のユーザーから集まるクエリや意図などのデータ蓄積は圧倒的です。
私が在職していた2008年、創業者が語った「検索結果は、究極的には1つしか提供したくない」という言葉が今も強く印象に残っています。彼らは当初から、現在のAIのような未来を予見し、設計していたのだと感じざるを得ません。
その強さを支えているのは、CEOのピチャイ氏が何度も掲げている「フルスタックのAIアプローチ」です。チップからサーバー、膨大な電力を賄うインフラ、そしてモデルから製品まで、すべてを自前で一貫して構築している。実はOpenAIやMetaといった競合ですら、Googleのインフラを“間借り”している状態なんです。この自社で土台を持っている強みは、今後さらに効いてくるでしょう。
押久保:たしかに……。そう聞くと、そもそも立ち位置が違うと捉えられますね。
杉原:はい。従来の検索においては、すでにGoogleは“言葉を制した”と思います。その上でAIが一般化する時代にも、同様に圧倒していくのではないでしょうか。

